秦野の梅で仕込む梅酒の話 — 日本酒蔵が作るウメザケのこと

秦野の梅で仕込む梅酒の話 — 日本酒蔵が作るウメザケのこと

日本酒の蔵が、梅酒を作っています。

神奈川県秦野市に、明治元年から続く蔵があります。金井酒造店。丹沢山塊から湧き出る名水を仕込み水に、長い年月をかけて日本酒を醸してきた蔵です。その蔵が手がける梅酒が、ウメザケです。

日本酒の蔵が梅酒を作る。それはたんなる「ついでの商品」ではありません。日本酒を知り尽くしているからこそ辿り着いた、梅酒のかたちがあります。


秦野の梅 — 地元素材へのこだわり

ウメザケに使う梅は、秦野産です。

神奈川県秦野市は、丹沢の山裾に広がる盆地の町。寒暖差のある気候が、梅の栽培に向いています。春になれば市内のあちこちで白い梅の花が咲き、実が膨らむ時季を地元の人たちは心待ちにします。

金井酒造店が梅酒の素材に秦野の梅を選んだのは、「近くにいいものがあるから」という、至極まっとうな理由です。同じ土地の水で育った梅を、同じ土地の水で仕込む。それが、ウメザケの出発点にあります。

産地が近いということは、梅の鮮度を最大限に生かせるということでもあります。収穫されたばかりの梅が持つ、あのみずみずしい香り。それをそのまま瓶に閉じ込めるような仕込みを、蔵は毎年丁寧に続けています。


日本酒ベースの梅酒は何が違うか — 焼酎ベースとの味わいの違い

梅酒のベースに何を使うか。これが、梅酒の個性を大きく左右します。

市販の梅酒の多くは、焼酎をベースにしています。焼酎はアルコール度数が高く、梅のエキスを効率よく引き出せるうえ、癖が少なくて梅の味を素直に表現しやすい。それは確かな利点です。

では、日本酒をベースにするとどうなるか。

日本酒は、もともと米と水と麹が織りなす複雑なうまみを持っています。そのうまみが、梅のやさしい酸味と溶け合うとき、焼酎ベースとは異なるやわらかさが生まれます。角がなく、すっと喉に落ちていく感覚。甘みの中に奥行きがある。梅酒としての輪郭を持ちながら、どこか日本酒らしいきめ細かさを感じさせる味わいです。

「梅酒が得意じゃない」という方が、ウメザケを口にして「これは飲める」とおっしゃることがあります。日本酒ベースならではの、くどさのない甘みがそう感じさせるのかもしれません。

名水百選の水で仕込む意味

秦野の水は、名水百選に選ばれています。

丹沢の山々に降った雨や雪が、長い時間をかけて地中に浸み込み、秦野盆地の地下に蓄えられる。その伏流水が、秦野の水道水の大部分を占めています。柔らかく、まろやかで、余計なものを感じさせない水です。

金井酒造店は創業以来、この水で日本酒を醸してきました。水の質は、酒の味に直結します。やわらかい水は発酵をおだやかに進め、酒にやさしい口当たりをもたらします。

その水がウメザケにも生きています。仕込みに使う日本酒の土台にも、仕込みの過程にも、秦野の水が関わっています。梅の酸味と水のまろやかさが、互いを邪魔しない。それがウメザケのバランスの良さにつながっています。


全国梅酒品評会で銀賞 — 評価されたポイント

2022年、ウメザケは全国梅酒品評会の日本酒梅酒部門で銀賞を受賞しました。

全国各地の梅酒が集まる品評会で、日本酒ベース部門という競争の激しいカテゴリでの受賞です。審査では、梅の風味の豊かさ、ベースとなるお酒との調和、後味のきれいさなどが評価されます。

秦野産の梅が持つ香りの良さ、日本酒ベースがもたらす味の深み、そして名水仕込みによる雑味のなさ。ウメザケが積み上げてきたものが、品評会という場で一つの答えを出した瞬間でした。

ただ、蔵としては「受賞したから良い」ではなく、「なぜ評価されたかを次に生かす」姿勢を大切にしています。受賞は通過点。秦野の梅酒として、これからも丁寧に作り続けることが、一番の返答だと考えています。


飲み方 — ロック、ソーダ割り、お湯割り

ウメザケは、飲み方を選びません。その日の気分で、いくつかの顔を見せてくれます。

ロックで飲むと、梅の香りがゆっくりと立ち上がります。氷が溶けるにつれて少しずつ味が変化し、最後の一口までグラスを傾けたくなります。日本酒ベースの複雑な風味をじっくり楽しみたいときに。

ソーダ割りは、食事との相性が抜群です。炭酸が梅の酸味を引き立て、すっきりした後味が次の料理を呼び込みます。揚げ物や脂ののった料理と合わせると、その清涼感が際立ちます。

お湯割りは、寒い季節に。温めることで梅の甘みがやわらかく膨らみ、ほっとする飲み口になります。焼酎ベースの梅酒だとお湯割りが苦手という方も、日本酒ベースのウメザケなら違和感なく楽しめるとおっしゃいます。

どの飲み方でも、ウメザケは主張しすぎず、その場に自然に溶け込みます。

通年で飲めるということ — 季節を選ばない

梅酒というと、夏の飲み物というイメージがあるかもしれません。梅雨の頃に仕込んで、夏にひんやり飲む。そういう季節感が、梅酒には染み付いています。

ウメザケは、通年でお届けしています。

夏はソーダ割りで涼しく。秋は食事に合わせてロックで。冬はお湯割りで体を温めながら。春は梅の花を思い浮かべながらそのまま。季節ごとに違う楽しみ方ができるのが、ウメザケの懐の深さです。

梅を漬けた季節の記憶を瓶の中に封じ込め、一年を通じて少しずつ開いていく。そういう飲み物だと思っています。

秦野から、梅酒のはなし

日本酒の蔵が、梅酒を作っています。

秦野の梅と、丹沢の名水と、明治元年から積み上げてきた醸造の技術が、一本のボトルに注がれています。全国の品評会で評価されながらも、その出発点はいつも秦野の土地です。

ウメザケを口にするとき、秦野の春の景色が少し遠くに感じられるかもしれません。白い梅の花、山から吹き下ろす風、澄んだ空気。そういうものが、味の奥にひっそりと宿っています。

秦野の梅が実をつける季節も、葉を落とす季節も、ウメザケはいつもそこにあります。

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