日本酒ハイボールが薄いと感じた人へ — 割るために設計された酒がある

丹沢の名水で仕込んだ日本酒が、ソーダと出会うと。 丹沢の名水で仕込んだ日本酒が、ソーダと出会うと。

**日本酒ハイボールとは、日本酒を炭酸水で割った飲み方のこと。**ソーダ割りとも呼ばれ、度数が7〜8度まで下がるので、米の甘みと炭酸の爽快感が合わさった軽やかな一杯になる。

ハイボールといえば、ウイスキーをソーダで割ったあの一杯。居酒屋でも家飲みでも、すっかり定番になった。でも「日本酒をソーダで割る」と聞いたら、ちょっと意外に感じるかもしれない。

日本酒を炭酸水で割るだけのシンプルな飲み方なのに、飲んでみると印象が変わる。日本酒のイメージにある「重さ」や「飲みにくさ」が消えて、グラスの中にはすっきりとした別の飲み物がある。ウイスキーハイボールが好きな人に勧めると、「これ本当に日本酒?」と言われることが多い。

ニューヨークやロンドンのバーでは、すでに「sake highball」がメニューに並んでいる。日本国内でも居酒屋チェーンやクラフトビールバーから静かに広がり始めていて、日本酒の新しい入口として注目されている飲み方だ。

海外のバーでも「sake highball」はメニューに登場するようになっている。 海外のバーでも「sake highball」はメニューに登場するようになっている。

なぜ日本酒をソーダ割りにすると美味しくなるのか

日本酒のアルコール度数は通常14〜16度。ワインとほぼ同じだが、「重い」「酔いやすい」と感じる人は多い。ところがソーダで割ると、これがまるで違う飲み物になる。

1:1で割ればアルコール度数は約7〜8度。ビールやチューハイと同じくらいまで下がる。それだけなら「薄めただけ」になりそうだが、日本酒のソーダ割りはそうならない。**炭酸の泡が立ち上がるとき、米の甘みや吟醸香がふわっと広がる。**香りが泡に乗って鼻に届くから、そのまま飲むよりもむしろ香りが華やかに感じられることがある。

そして食事との相性が抜群にいい。すっきりしているから料理の邪魔をしないどころか、口の中をリセットしてくれるから、次の一口がまた美味しくなる。ウイスキーハイボールが「食中酒の王様」と呼ばれるなら、日本酒ハイボールは「食中酒の隠し玉」だ。

日本酒を「重い」と感じていた人ほど、ソーダ割りで飲んだときの軽やかさに驚く。

日本酒ハイボールの作り方

作り方は驚くほどシンプルだ。ウイスキーハイボールを作れる人なら、何も変わらない。

グラスに氷をたっぷり入れる。大きめの氷だと溶けにくくて水っぽくならない。冷えた日本酒をグラスの3分の1から半分まで注いで、冷えた炭酸水をそっと足す。炭酸水は氷に当てないように注ぐのがコツだ。泡が潰れずに長持ちする。マドラーで1〜2回だけやさしく混ぜたら、それで完成。

レモンスライスを添えると、柑橘の香りが加わって爽やかさが一段上がる。搾らずにグラスのふちに乗せるだけでも十分だ。金井酒造店のクラッチュ(レモンサワーの素・果汁40%)を少し垂らして「レモン日本酒ハイボール」にするのも蔵元ならではの楽しみ方で、これがまた旨い。

ひとつだけ大事なのは温度だ。日本酒も炭酸水も、しっかり冷やしておくこと。常温の日本酒を使うと氷が早く溶けて味がぼやけてしまう。夏場はグラスも冷凍庫で冷やしておくと、最初の一口が完璧になる。

炭酸水は氷に当てず、そっと注ぐ。泡が長持ちする。 炭酸水は氷に当てず、そっと注ぐ。泡が長持ちする。

基本の作り方はこれだけだが、フルーツを加えたりスパイスを効かせたりと、アレンジの幅は想像以上に広い。レモン・グレフル・すだち大葉など8パターンのレシピをまとめた記事もあるので、一杯目が気に入ったらぜひ試してみてほしい。

「割って飲む」ために設計された日本酒がある

ただ、普通の日本酒をソーダで割ると、銘柄によっては「薄い」「何か物足りない」と感じることがある。日本酒ハイボールを試してみてイマイチだった人は、使った日本酒が割ることを想定していなかったのかもしれない。

金井酒造店では、この問題を解決するために「SAKE for Highball(サケフォーハイボール)」を造った。ソーダで割ることを前提に、仕込みの段階から味わいのバランスを設計した日本酒だ。割ったときに米の甘みと旨みがちょうどよく広がるように、度数と味の設計を調整している。

このサケフォーハイボールには、もうひとつ特徴がある。あえて杉の香りをつけていること、そして一年以上熟成させた酒を使っていることだ。杉の香りは日本酒の伝統にある「樽酒」の記憶を呼び起こす。ウイスキーが樽の香りでハイボールに奥行きを出すように、サケフォーハイボールは杉の香りで炭酸の向こう側に「和」の余韻を残す。そして一年以上の熟成が、角の取れたまろやかな味わいを生んでいる。新酒のフレッシュさではなく、熟成のやわらかさを炭酸に乗せる。この設計が、ソーダで割っても「薄い」と感じさせない理由だ。

明治元年創業の金井酒造店が、丹沢山系の名水百選の伏流水で仕込み、杉の香りを纏わせ、一年以上寝かせてから出荷する。水の質が酒の質に直結するのは当然だが、ハイボールにしたときにその差がいちばんはっきり出る。水が硬い酒は割ると角が立つが、丹沢の軟水寄りの中硬水で仕込んだサケフォーハイボールは、炭酸と一緒に口の中をなめらかに流れていく。

日本酒のソーダ割りが「薄い」と感じた人こそ、割るために造られた酒で試してみるのもいい。印象がけっこう変わるかもしれない。

唐揚げにもパスタにも合う——食事を選ばない懐の深さ

日本酒ハイボールの食事との相性は、想像以上に広い。「日本酒だから和食しか合わない」は完全に過去の話だ。

唐揚げとの組み合わせは鉄板で、炭酸のすっきり感が脂を洗い流して口の中をリセットしてくれる。ペペロンチーノやアーリオ・オーリオのようなガーリック系パスタとも意外なほど合うし、寿司や刺身はもちろん得意分野だ。チーズと生ハムをつまみながら日本酒ハイボールを飲むと、ワインの代わりとして完全に機能する。日本酒の甘みがチーズの塩気を受け止めて、炭酸がそれをさらりと流す。

ピザにも合う。炭酸とトマトソースの酸味が好相性で、ホームパーティーの一杯としても優秀だ。ウイスキーハイボールがジャンルを問わず愛されるように、日本酒ハイボールも食卓のジャンルを選ばない。むしろ「何にでも合う」という意味では、かなり優秀な食中酒だと思う。

日本酒の、いちばんやさしい入口

「日本酒は飲んだことがない」「なんとなく敷居が高い」——そう感じている人に、日本酒ハイボールはいちばんやさしい入口になる。

難しいことは何もない。グラスに氷を入れて、日本酒を注いで、炭酸を足すだけ。ウイスキーハイボールを作るのと何も変わらない。でもその中に、神奈川県秦野市の丹沢山系から湧き出る名水百選の水と、明治元年から百五十年以上続く金井酒造店の酒造りの技が詰まっている。

「日本酒って、こういう飲み方もあるんだ」と気づいた瞬間から、日本酒が少し身近になるはずだ。そしてそのうち、ソーダなしでそのまま飲んでみたくなる日が来る。日本酒ハイボールは、日本酒の世界へのいちばんやさしい入口なのかもしれない。そのまま飲んでみたくなったら、日本酒の種類や造り方をまとめた入門ガイドを覗いてみるのもいい。

ちなみに焼酎のソーダ割りと日本酒ハイボールの違いを飲み比べてみるのも面白い。焼酎派の人が日本酒ハイボールに出会うきっかけになることが多いし、焼酎好きが日本酒に入るルートを知っておくと、友人に勧めるときにも役立つ。

日本酒がそもそも苦手だという人には、同じ金井酒造店が造るクラッチュ 湘南潮彩レモン40という入口もある。大吟醸ベースのレモンサワーの素で、果汁40%。ソーダで割ればレモンサワー、日本酒で割れば和風カクテル。楽しみ方は一通りではない。

今夜、冷蔵庫に炭酸水があるなら。日本酒ハイボールを一杯だけ試してみてほしい。日本酒の印象が、今日から変わるかもしれない。


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