通信販売酒類小売業免許とは — ネット販売でも要らない場合と、売れないお酒がある話
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※ 写真はイメージです
この記事は2026年9月13日時点の国税庁の公表内容にもとづいて書いています。制度は変わることがあるので、実際に申請される際は必ず最新の情報をご確認ください。
「自分のお酒をつくって、ネットで売りたい」。そう考えたときに最初にぶつかるのが、お酒を売るには免許が要る、という壁です。
しかもこの免許、種類がいくつもあります。そして「ネットで売るなら通信販売の免許」だと思っている方が多いのですが、それが当てはまらない場合があります。逆に、通信販売の免許を取っても売れないお酒があるということも、あまり知られていません。
お酒をつくる側から見て、ここは誤解されやすいところだと感じています。国税庁が公表している内容を、順番に整理します。
目次
まず、お酒を売るには免許が要る
大前提です。国税庁はこう書いています。
酒類の販売業をしようとする場合には、酒税法に基づき、販売場ごとにその販売場の所在地の所轄税務署長から販売業免許を受ける必要があります
ポイントは「販売場ごとに」というところです。会社に1つではなく、売る場所ごとに必要になります。
ネット販売でも「通信販売免許」とは限らない
ここがいちばん誤解されているところだと思います。
酒税法でいう「通信販売」には定義があります。国税庁の法令解釈通達では、こう定められています。
2都道府県以上の広範な地域の消費者等を対象として、商品の内容、販売価格その他の条件をインターネット、カタログの送付等により提示し、郵便、電話その他の通信手段により売買契約の申込みを受けて当該提示した条件に従って行う販売
つまり分かれ目は売る相手の地域の広さであって、ネットかどうかではありません。国税庁のQ&Aでも、はっきりこう書かれています。
インターネットを利用した酒類の販売であっても、販売場の所在する同一の都道府県内や、2都道府県以上にわたる場合で販売場の所在する市町村(特別区を含む。)の近隣にある市町村の消費者等を対象に酒類の販売を行う場合には、一般酒類小売業免許の対象となります
さらに、近隣市町村へ自ら配達する形で売る場合も一般免許の扱いになります。この「自ら配達」には、配達や引渡しを他の事業者に委託している場合も含まれるとされています。
| 売り方 | 必要な免許 |
|---|---|
| 店頭で売る | 一般酒類小売業免許 |
| ネットだが、同じ都道府県内だけ | 一般酒類小売業免許 |
| 近隣市町村へ自ら配達する | 一般酒類小売業免許 |
| 2都道府県以上の広い地域に売る | 通信販売酒類小売業免許 |
ちなみに一般酒類小売業免許は、国税庁の定義では「販売場において、原則として全ての品目の酒類を小売(通信販売を除く)することができる」免許です。品目の制限がないのが特徴です。
通信販売免許には、売れるお酒の制限がある
ここが、この免許のいちばん大きな特徴です。通信販売酒類小売業免許を取っても、どんなお酒でも売れるわけではありません。
国税庁の「通信販売酒類小売業免許申請の手引」では、販売できる酒類の範囲がこう限定されています。
通信販売できる酒類
(1)国産酒類のうち
イ カタログ等の発行年月日が属する会計年度の前会計年度における酒類の品目ごとの課税移出数量が、すべて3,000キロリットル未満である酒類製造者(=「特定製造者」)が製造・販売する酒類
ロ 地方の特産品等(製造委託者が所在する地方の特産品等に限る)を原料として、特定製造者以外の製造者に製造委託する酒類で、一会計年度における製造委託者ごとの製造委託数量の合計が3,000キロリットル未満であるもの
(2)輸入酒類(輸入酒類については、酒類の品目や数量の制限はありません)
要するに大きな蔵のお酒は、この免許では売れません。3,000キロリットルという基準は、製造者の側の規模で決まります。全国的に名前の知られた銘柄の多くは、ここに引っかかります。
裏を返すと、この免許は小さな蔵のお酒を売るための制度だということです。国税庁のQ&Aでも、販売できる酒類は「地酒、輸入酒など一般の酒販店では通常購入することが困難なもの」に限られる、と説明されています。
なお、前会計年度の課税移出実績がない場合は、カタログ等の発行日が属する会計年度の製造見込数量で判断するとされています。そして実際の申請では、その酒類が通信販売の対象であることを示す、酒類製造者が発行する証明書を添付することになります。
自分のお酒をつくって通販したい場合
先ほどのロの条項が、まさにこの場合の話です。読み解くと、こういう条件になります。
- 地方の特産品等を原料にすること。しかも「製造委託者が所在する地方の特産品等」に限られます
- 製造委託であること。委託先は特定製造者以外の製造者
- 委託数量が一会計年度で合計3,000キロリットル未満であること
そして見落としやすいのが、「地方」の範囲です。手引にはこう注記されています。
「製造委託者が所在する地方」は、原則として製造委託者の住所又は本店が所在する都道府県の範囲内とします
自分がいる都道府県の特産品を、原料に使う。これが条件です。神奈川に会社があるなら神奈川の特産品、という形になります。委託先の蔵がどこかではなく、委託する側がどこにいるかで地方が決まる、という読み方になります。
この場合の申請には、証明書ではなく製造委託契約書や同計画書等を添付するとされています。
卸す場合は、また別の免許になる
ここまでは小売の話です。国税庁の通達では、小売の相手は「消費者、料飲店営業者又は菓子等製造業者」とされていて、居酒屋や料理店にお酒を納めるのも小売にあたります。酒販店(酒類販売業者)やお酒の製造者に売るなら、卸売業免許という別の区分になります。
卸売業免許にもいくつも種類があって、全酒類・ビール・洋酒・輸出入・店頭販売・協同組合員間、といった区分が定められています。そのなかに、自分のブランドを持ちたい人向けの免許があります。
自己商標酒類卸売業免許とは、自らが開発した商標又は銘柄の酒類を卸売することができる酒類卸売業免許をいう
一文だけの定義ですが、意味は大きいと思います。自分でつくったブランドのお酒を、酒販店に卸すための免許がちゃんと用意されているということです。この免許の存在を知らずに、卸すのをあきらめてしまうケースもあるのではないかと思います。
通信販売で守ること
免許を取ったあとにも、通信販売には決められていることがあります。国税庁はこの2つを挙げています。
- 販売方法が特定商取引に関する法律の消費者保護関係規定に準拠すること
- 「二十歳未満の者の飲酒防止に関する表示基準」(国税庁告示)に基づく表示をすること
根拠となる法令は、酒税法第9条・第10条・第11条、および法令解釈通達の第2編第9条・第10条・第11条関係です。
つくるほうは、委託という道があります
ここまで「売る」免許の話をしてきましたが、お酒をつくるには、また別に製造免許が必要です。個人が自分で醸して売る、というのは現実的ではありません。
だから、自分のブランドのお酒を持ちたい場合は既にある蔵に委託してつくるのが現実的な道になります。先ほどの通信販売免許のロの条項が、まさにその形を想定した規定です。
私たちの蔵でも、オリジナルの日本酒づくりのご相談をお受けしています。神奈川県秦野市で明治元年から酒を醸してきた蔵です。どんなお酒にしたいか、どれくらいの量からできるか、といったところから一緒に考えます。
この記事は制度の全体像をまとめたものです。実際の免許申請では、販売場の要件、申請者の要件、添付書類など、ここに書ききれない項目が多くあります。申請にあたっては、所轄の税務署、または酒類の免許申請を扱っている行政書士にご相談ください。
出典(2026年9月13日確認)
免許の区分と定義、通信販売の範囲、自己商標酒類卸売業免許:国税庁 法令解釈通達 第9条 酒類の販売業免許
ネット販売における免許の区分、通信販売で守るべき事項:国税庁 お酒に関するQ&A【販売業免許関係】Q8
通信販売できる酒類の範囲、3,000キロリットルの基準、製造委託の条件:国税庁「通信販売酒類小売業免許申請の手引」(PDF)
※ 制度は改正されることがあります。申請の際は必ず国税庁および所轄税務署で最新の内容をご確認ください。