日本酒の保存方法と賞味期限 — 冷蔵庫に入れて、開けたら早めに飲む。それだけ
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日本酒を造っている立場から、ひとつ本音を言うと、できるだけ早めに飲んでもらえると嬉しい。冷蔵庫に寝かせて「いつか特別な日に」と思っているうちに、そのお酒がいちばん美味しかった瞬間は静かに過ぎていく。蔵元がいちばん恐れているのは、せっかく買ってもらったお酒が、飲まれないまま棚の奥に忘れられることだ。
未開封でも油断できない
日本酒は光と熱に弱い。紫外線に当たると「日光臭」と呼ばれる不快な匂いが出るし、高温にさらされると味のバランスが崩れてしまう。キッチンの棚や窓際に置いておくだけで、蔵を出たときの味からは少しずつ離れていく。
未開封であっても、基本は冷蔵庫での保存をおすすめしたい。特に生酒は火入れをしていないぶん酵母が生きたままなので、常温に置くと味が変わるスピードが格段に速い。生酒の冷蔵保存は「推奨」ではなく「必須」だと思ってもらいたい。
火入れ済みの日本酒であれば、冷暗所——直射日光が当たらず、温度変化の少ない涼しい場所——でも保存はできる。ただ、夏場の日本の室温は冷暗所の条件を簡単に超えてしまう。迷ったら冷蔵庫に入れておくのがおすすめだ。
開封したら、もう時計は動いている
栓を開けた瞬間から、お酒は空気に触れて酸化が始まる。開封後は冷蔵庫に立てて保存し、できれば3日から5日のうちに飲み切るのがおすすめだ。横に倒すと空気に触れる面積が増えるうえ、キャップの素材によっては液漏れや雑味の原因にもなる。
「開封して一週間経ったけど大丈夫?」と聞かれることがある。飲めなくはない。しかし、蔵を出たときに意図した味わいからは確実に離れている。料理酒として使うのもひとつの手だが、いちばんいいのは最初から飲み切れる量を買うことだ。四合瓶(720ml)を一人で飲み切れないなら、最近は300mlの小瓶を出している蔵も増えている。
賞味期限がない、という話
意外に思われるかもしれないが、日本酒には法律で定められた賞味期限がない。ラベルに書かれているのは「製造年月」であって、「この日までに飲んでください」という期限ではない。アルコール飲料は腐敗しにくいため、食品表示法上の賞味期限の対象外になっているのだ。
だからといって「いつまでも大丈夫」という意味ではない。賞味期限がないのは安全性の話であって、味の話ではない。日本酒は生き物のように日々変化している。製造から時間が経てば、蔵元が設計した味わいからは少しずつ離れていく。製造年月から半年以内、できれば数ヶ月以内に飲むのが、蔵元としてはいちばん嬉しい。
熟成と劣化はまったく別の話
「古い日本酒は美味しくなるのでは」と思う方もいるだろう。確かに「古酒」「熟成酒」という世界はある。琥珀色に変化した古酒は、紹興酒やシェリーを思わせる複雑な味わいを持ち、愛好家も多い。しかしそれは、温度や環境を厳密に管理したうえで意図的に寝かせた結果であって、冷蔵庫の奥で忘れられていたお酒が偶然美味しくなるのとは根本的に違う。
劣化のサインはわかりやすい。色が黄色や茶色に濃くなっていたり、老ねた匂い——古い米櫃のような匂い——がしたり、口に含んだときに雑味や酸味が強く感じられたりしたら、それは熟成ではなく劣化だ。
結論は、とてもシンプルだ
冷蔵庫に入れて、開けたら早めに飲む。それだけだ。
日本酒の保存にまつわる知識はいろいろあるが、伝えたいことは突き詰めるとこの一行に収まる。鮮度がいちばんの味方であり、どんな保存方法も「早く飲む」には勝てない。ちなみに、金井酒造店のオンラインストアでは冷蔵便で出荷しているので、届いたらそのまま冷蔵庫に入れてもらえれば、蔵を出たときの状態を保ったまま楽しめる。日本酒のことをもっと知りたくなったら、まずは一本買って、冷蔵庫に入れて、今夜開けてみるといい。温度を変えて飲み比べるのも楽しいが、何より大事なのは、美味しいうちに飲むことだ。