湘南ゴールドのお酒 — 神奈川生まれの柑橘で造った和リキュール
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湘南ゴールドという名前を聞いたことがあるだろうか。神奈川県が12年の歳月をかけて開発した柑橘品種で、黄金色の小さな果実からは想像できないほど豊かな香りを持っている。「ゴールデンオレンジ」と温州みかんの交配で生まれたこの果実は、神奈川県西部の限られた地域でしか栽培されていない。毎年春先に出回る旬の短さもあって、県外ではまだ知らない人のほうが多いかもしれない。
レモンのような鋭い酸味ではなく、みかんに近い穏やかな甘みの奥に、グレープフルーツを思わせる華やかな香りが隠れている。皮を軽くこすっただけで部屋中に広がるような、上品で強い芳香。この香りの個性が、湘南ゴールドを「ただの柑橘」で終わらせない理由だ。
日本酒ベースの和リキュールという選択
金井酒造店では、この湘南ゴールドを使った和リキュール「ササノネ 湘南ゴールド」を造っている。ベースは自社で醸した日本酒だ。焼酎やスピリッツではなく、あえて日本酒をベースにしたのには理由がある。
日本酒には米由来のまろやかな旨味がある。その旨味が湘南ゴールドの穏やかな甘みと重なると、果実の香りを消さずに奥行きのある味わいが生まれる。焼酎ベースのリキュールはアルコールの力強さで果実味を引き立てるが、日本酒ベースは果実と酒が溶け合うように馴染む。飲んだときに「柑橘のお酒」ではなく「柑橘と米の酒」と感じるのは、この馴染み方のおかげだ。
巷で人気の湘南レモンサワーとはまた違った方向の飲み物だと思ってほしい。レモンサワーが爽快さで勝負するなら、ササノネ湘南ゴールドは香りの余韻で勝負する。一口含んで鼻に抜ける柑橘の芳香が、しばらくふわりと残る。その余韻をゆっくり楽しむのが、この酒の醍醐味だ。
飲み方はシンプルがいい
ロックが一番わかりやすい。氷をグラスに入れて注ぐだけで、温度が下がるにつれて香りの表情が変わっていく。最初はフレッシュな柑橘香が立ち、氷が溶けて少し薄まると米の甘味がじわりと顔を出す。ひとつのグラスで二つの味わいが楽しめる。
ソーダ割りも良い。炭酸を加えると香りが弾けるように広がり、食事と合わせやすくなる。特に夏場、よく冷えたグラスに湘南ゴールドのソーダ割りと焼き魚。レモンサワーとは違う穏やかな酸味が、魚の脂をさらりと流してくれる。レモンサワーの作り方を探している人にも、ぜひ一度試してみてほしい別の選択肢だ。
ストレートで少しずつ舐めるように飲むのも悪くない。アルコール度数は控えめなので、食後にデザート感覚で楽しむこともできる。
春だけの出会い
湘南ゴールドの収穫時期は限られている。だからこのリキュールも、造れる量には限りがある。毎年同じ味に仕上げようとしても、果実の出来によって微妙にニュアンスが変わる。それもまた、地元の果実を使った酒造りの面白さだと蔵元としては思っている。
日本酒とは何かを知ると、日本酒から生まれるリキュールの世界もまた広く見えてくる。米と水と麹から始まった酒造りの技術が、こうして地元の柑橘と出会って新しい飲み物になる。神奈川の蔵元として、神奈川生まれの果実を酒に仕立てることには、理屈を超えた喜びがある。
湘南ゴールドの季節が来たら、ぜひ一杯。
気になった方はササノネ 湘南ゴールドをまず試してみてほしい。ロックで湘南ゴールドの華やかな香りをそのまま楽しむのがおすすめの入口だ。柑橘つながりでいえば、清酒(大吟醸)と醸造アルコールにレモン果汁を合わせたクラッチュ 湘南潮彩レモン40との飲み比べも面白い。同じ蔵から生まれた二つの柑橘酒が、それぞれまったく違うアプローチで果実の味わいを引き出していることに気づくはずだ。