日本酒が苦手な人へ|克服しなくていい、合う一本を見つけるだけでいい
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日本酒が苦手な人にも、合う一本はある。大事なのは克服することではなく、自分に合うタイプを知ることだ。
ビールもワインも飲めるのに、日本酒だけは無理——そういう人は少なくない。二十歳のころに飲んだ安い日本酒の記憶が強すぎて、「日本酒」というカテゴリごと避けてしまっているケースだ。
※ 写真はイメージです
この記事は、そういう人に向けて書いている。日本酒が苦手な人に「好きになれ」と言うつもりはまったくない。ただ、苦手だと思っていたものの正体が「日本酒全体」ではなく「ある特定のタイプの日本酒」だった、というケースがすごく多い。それだけ知ってもらえたら十分だ。
日本酒が苦手な理由は、大体3つに分かれる
いろんな人に「なんで日本酒が苦手なの?」と聞いてきた。返ってくる答えは、ほとんどこの3つのどれかだ。
「アルコールの匂いがきつい」——居酒屋の熱燗や、安い紙パック酒の印象が強いケース。鼻にツンとくるあの感じが嫌だという人は本当に多い。
「甘ったるい」——口に残るべたっとした甘さが苦手というケース。甘いお酒全般が苦手な人もいれば、日本酒特有の甘さだけがダメという人もいる。
「なんか古臭い」——味というより、イメージの問題。おじさんが飲むもの、宴会でなみなみ注がれるもの、という先入観が邪魔をしている。
どれも、気持ちはよくわかる。僕だって蔵に来る前は日本酒にそこまで興味がなかった。でも蔵で何百種類も飲んでいくうちに気づいたことがある。「日本酒」という一語でまとめるには、あまりにも幅が広すぎるのだ。
ビールにもピルスナーからIPAからスタウトまであるように、日本酒にもまったく別の顔をした酒がいくらでもある。苦手だったのは「日本酒」じゃなくて「ある日の、あるタイプの、ある飲み方の日本酒」だった——そういうことが、よくある。
アルコールの匂いが苦手な人へ
匂いが苦手なら、まず度数を下げるのがいちばん手っ取り早い。
碧笹(あおざさ) は、うちの蔵が造っている低アルコールの日本酒だ。酵母77号という特殊な酵母を使っていて、発酵をあえて穏やかに進めることで、アルコール度数を抑えている。飲んでみると、日本酒というよりフルーティーな白ワインに近い印象を受けると思う。あの「ツンとくる感じ」がほとんどない。
もうひとつの選択肢は、日本酒をソーダで割ること。うちには「Sake for Highball(サケフォーハイボール)」という、割ることを前提に設計された日本酒がある。ソーダで割ると度数は7〜8度まで下がる。杉の香りがほのかに立ち上がって、一年以上の熟成による丸みがあるから、割っても味がぼやけない。日本酒ハイボールの作り方と楽しみ方はこちらにまとめている。
「日本酒はストレートで飲むもの」という思い込みを外すだけで、世界がだいぶ変わる。
匂いが苦手な人へ — もうひとつのアプローチ
アルコールの匂いではなく、日本酒特有の「米っぽい香り」や「発酵臭」が苦手という人もいる。
そういう人には、フルーティー系の日本酒を試してみるのもいいと思う。黒笹 Eden は、リンゴやバナナを思わせる華やかな香りが特徴で、いわゆる「日本酒っぽい匂い」とは正反対のところにいる。
それから、飲むときのグラスを変えるだけでも印象はかなり違う。おちょこではなくワイングラスで飲むと、香りが開いて、フルーティーな面だけが先に立つ。同じ酒でもグラスが違うと別物になるのは、ワインと同じだ。
ワインが好きな人向けの日本酒ガイドも書いているので、ワイン派の人はそちらも参考になると思う。
※ 写真はイメージです
「甘ったるい」が苦手な人へ
「甘い日本酒が苦手」と言う人に限って、実は「辛口」を選んで余計に苦手になっていることがある。
日本酒の「辛口」は、甘さが少ないぶんアルコールの刺激が前に出やすい。辛口を頼んだのに「うわ、きつい」となって、じゃあ甘口を……と頼むと今度は「甘ったるい」。この往復で日本酒全体が嫌になるパターンは、すごくもったいない。
「辛口ください」で失敗する理由という記事で詳しく書いているのだけど、甘い・辛いの二択ではなく「旨味があるかどうか」で選ぶと、ハマる一本が見つかりやすい。旨味がしっかりあって、でも甘くも辛くもない——そういう日本酒は実はたくさんある。
温度を変えてみるのもひとつだ。冷やすと甘みが抑えられ、すっきりした輪郭が出る。同じ酒でも温度帯を変えるだけで印象がまるで違うから、「この酒は合わない」と感じたときは、温度だけ変えてもう一回試してみるのも手だと思う。そもそも甘口と辛口の違いが何なのか気になった方は「甘口と辛口の違い」を読むと、自分が苦手な味の正体がわかるかもしれない。
無理に好きにならなくていい。でも1杯だけ試してみてほしい
ここまで書いてきたけど、最後にひとつだけ。
日本酒が苦手なら、苦手でいい。
無理に克服する必要なんてない。ビールが苦手な人にビールを好きになれとは誰も言わないし、日本酒だって同じだ。お酒の好みに正解はない。
ただ、もし「一度ダメだったから、もう二度と飲まない」と決めているなら、それだけはちょっともったいないかもしれない。あのとき苦手だったのは、何千種類もある日本酒のうちのたった一本だ。たまたま相性が悪かっただけで、どこかに「あれ、これはいけるかも」という一本がある可能性は、結構高い。
「日本酒が全部無理」と思っていた人が、たった一本で印象が変わることは珍しくない。
苦手を克服する必要はない。合う一本を見つけるだけでいい。それくらい気楽な話だと思う。
日本酒の選び方がわからない人のためのガイドも置いておく。「そもそもどう選べばいいのかわからない」という人は、こちらから読んでもいいと思う。