日本酒、初心者におすすめの一本は? — 「飲みやすい」の正体から選ぶ入口の酒
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※ 写真はイメージです
「日本酒 初心者 おすすめ」で検索すると、たいてい「飲みやすい銘柄10選」が出てくる。間違いではない。ただ、ひとつ引っかかることがある。
初心者と言っても、人によってまったく違う。ビールしか飲んだことがない人と、ワインが好きで日本酒に手を出してみたい人では、合う入口が違う。甘いものが好きな人と、さっぱりが好きな人でも違う。「初心者向け=とにかくクセのない酒」とまとめてしまうと、本当に合う一本からは遠ざかることもある。
蔵で働いていて思うのは、最初の一杯で「日本酒っておいしい」と感じてもらえるかどうかは、銘柄選びでかなり変わるということ。ここでは、タイプ別に入口に向く酒を整理してみる。
初心者には「日本酒感が薄いもの」から入るのがいい
初心者にまずおすすめしたいのは、いわゆる「ザ・日本酒」な味わいの強いものよりも、日本酒っぽさが控えめで飲みやすいタイプだと思う。
日本酒に慣れていない人がつまずきやすいのは、独特のアルコール感や、米由来のどっしりした旨味だ。ここが「重い」「クセがある」と感じる原因になりやすい。だから入口は、香りが穏やかで口当たりが軽く、後味がすっと消えるものから始めるのがいい。そこで「おいしい」と感じられれば、そこから濃い味の純米酒や燗酒へと、自然に世界が広がっていく。
逆に、いきなり個性の強い酒や高い大吟醸から入ると、良さが分からないまま「日本酒は苦手」で終わってしまうことがある。もったいない。
甘いものが好きなら、やさしい味のタイプを
ふだんジュースやフルーツ系のお酒が好きな人には、果実のような香りがあって口当たりのなめらかな酒が向いている。
うちの蔵だと、ササノメグリ碧笹(あおざさ)がそのタイプ。低アルコールの純米酒で、白ワインのような甘酸っぱさがあり、日本酒特有のアルコール感は控えめだ。冷やしてワイングラスで飲むと「これ、日本酒なの?」という反応が返ってくることが多い。最初の一本としては、かなり間口が広いと思う。
華やかな香りのほうが好みなら、黒笹Eden(純米吟醸)がいい。グラスに注いだ瞬間から果実のような香りが広がって、やわらかな甘みが続く。香りで日本酒の印象が変わる人は多い。
もっと甘さがほしいなら、梅を使ったウメザケのような甘口タイプから入る手もある。甘くて飲みやすいものでまず「お酒の場」に慣れて、そこから少しずつ辛口側に寄せていく——という進み方でもまったく問題ない。
お酒の強さが不安なら、ソーダで割る
「そもそもお酒が強くない」「ストレートで飲むのが不安」という人には、ソーダ割りという入口がおすすめ。
うちには SAKE for Highball という、ソーダ割り専用に設計した日本酒がある。原酒で度数は18度と高めだが、これは炭酸で割ることを前提にした設計で、1:1で割ると度数は約9度。ビールと同じくらいの感覚で飲める。氷を入れたグラスに注いでソーダを加えるだけだから、作り方も難しくない。
度数を自分で調整できるのがソーダ割りのいいところ。最初は薄めに割って、慣れてきたら濃くしていけばいい。レモンをひと絞りすれば、さらに飲みやすくなる。「日本酒=強い・難しい」というイメージがある人ほど、この入口は相性がいいと思う。
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「とりあえず大吟醸」が初心者に向かない理由
意外かもしれないが、いちばん高い大吟醸を初心者の最初の一本にするのは、必ずしもおすすめではない。
大吟醸は米を磨き上げて造る、華やかな香りが魅力の酒だ。ただ、その華やかさは慣れていないと「香りが強すぎる」と感じることもある。値段も張るから、合わなかったときのがっかり感も大きい。「高い=初心者向け」ではないのが、日本酒の難しくて面白いところだ。
最初は手の届く範囲の一本で「自分はどういう味が好きか」をつかんで、そのうえで大吟醸に進むほうが、ずっと良さが分かる。順番の問題だと思う。
初心者が失敗しない、買い方と飲み方
銘柄選びと同じくらい、買い方・飲み方でも印象は変わる。いくつかコツを挙げておく。
まずサイズ。最初は四合瓶(720ml)くらいがちょうどいい。一升瓶(1800ml)は飲みきる前に味が落ちることがあるし、合わなかったときに持て余す。小さめから試すのが安心だ。
次に温度。同じ酒でも、冷やすとアルコール感が和らいで軽く感じ、温めると甘みやふくらみが出る。飲みやすさを求めるなら、まずはよく冷やして飲んでみるのがいい。物足りなければ常温やぬる燗を試す、という順番がわかりやすい。
そして保存。日本酒は熱と光に弱いので、開けたら冷蔵庫へ。なるべく早めに飲みきるほうがおいしい。このあたりは冷酒の基本をまとめた記事に温度帯ごとの違いを書いているので、気になる方はあわせてどうぞ。
結局、初心者に合う一本も「人による」
ここまで書いてきたが、本当のところ、初心者におすすめの一本も人によって変わる。甘いのが好きか、さっぱりが好きか。お酒に強いか弱いか。どんな場面で飲むか。それによって入口は変わる。
直売所では、初めての人にこそ「ふだん何を飲みますか」「甘いものとさっぱり、どちらが好きですか」と聞くようにしている。その答えで出す一本がまるで違うからだ。この蔵元の接客を、6つの質問でオンラインでできるようにしたのが蔵元AIの診断だ。日本酒の知識はゼロでいい。