レモンサワーは焼酎以外でも作れる — 大吟醸・日本酒ベースという新しい選択肢
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レモンサワーのベースは焼酎。それが当たり前だと思っている人は多い。実際、居酒屋で出てくるレモンサワーの99%は焼酎ベースだし、スーパーに並ぶレモンサワーの素もほぼすべてが焼酎を使っている。しかし「ベースのお酒を変えたらどうなるか」と考えたことはあるだろうか。ウォッカ、ジン、そして日本酒。ベース酒が変わると、レモンサワーはまったく別の飲み物になる。
目次
なぜレモンサワーは焼酎ベースが主流なのか
そもそもレモンサワーが焼酎ベースになった理由は、歴史的な経緯と実利の両面がある。昭和の居酒屋文化のなかで、安価な甲類焼酎にレモンとソーダを加えたのがレモンサワーの原型だ。甲類焼酎は連続式蒸留で造られるため味にクセがなく、レモンの風味を邪魔しない。しかも安い。店側にとっては原価を抑えられ、客側にとってはさっぱり飲める。この利害の一致が、焼酎ベース一択の状況を半世紀以上にわたって作り上げてきた。
焼酎ベースのレモンサワーの味わいは、シャープでドライだ。アルコールの輪郭がはっきりしていて、レモンの酸味と合わさるとキリッとした切れ味が生まれる。揚げ物や脂っこい料理との相性は抜群で、口の中をさっぱりリセットしてくれる。この「リセット力」こそが、焼酎ベースのレモンサワーが居酒屋の定番であり続ける最大の理由だ。
ただし弱点もある。焼酎ベースはアルコール感が前に出やすく、飲み慣れない人には「ツンとくる」印象を与えることがある。レモンと炭酸で和らげてはいるが、ベース酒そのものの風味で楽しませる設計にはなっていない。あくまで「割り材」としての焼酎であり、酒としての存在感は薄い。
焼酎ベースのレモンサワーは優秀な「食中酒」だが、ベース酒の味わいを楽しむ飲み物ではない。
ウォッカベース、ジンベース — 居酒屋で増える「焼酎以外」
実は近年、焼酎以外のベース酒を使ったレモンサワーが居酒屋やバーで増えてきている。その筆頭がウォッカベースだ。
ウォッカは焼酎以上に無味無臭に近く、レモンの風味をさらにピュアに引き出す。モスクワミュールやスクリュードライバーのように、ウォッカは「割り材として最も優れた蒸留酒」という評価がカクテルの世界では定着している。レモンサワーに使っても、焼酎よりすっきりした仕上がりになる。アルコールの嫌な匂いが少ないため、お酒にあまり強くない人からの支持も厚い。
ジンベースのレモンサワーも面白い存在だ。ジンにはジュニパーベリーをはじめとするボタニカルの香りがあり、レモンの柑橘感と重なることで複雑なアロマを生む。ジントニックが好きな人なら、ジンベースのレモンサワーはきっとハマるだろう。都内のクラフトカクテルバーでは、すでにクラフトジンを使ったレモンサワーをメニューに載せている店が少なくない。
ただし、ウォッカもジンも蒸留酒だ。焼酎ベースと比べて味の方向性は異なるが、「蒸留酒特有のドライさ」は共通している。アルコール感が前に出やすいという焼酎の弱点は、ウォッカやジンでも完全には解消されない。
ウォッカやジンに変えても、蒸留酒ベースである以上、ドライな酒質からは逃れられない。
醸造酒ベースという発想の転換
ここで視点を変えてみたい。焼酎、ウォッカ、ジン。これらはすべて蒸留酒だ。原料を発酵させた後に蒸留することでアルコール度数を高め、クセを取り除いている。蒸留の過程で原料由来の旨味やコクの多くが失われるため、どうしてもドライな方向に振れる。
一方、醸造酒は蒸留を経ずに発酵だけで仕上げるため、原料の味わいがそのまま残る。ワインならブドウの果実味、ビールなら麦芽の甘み、そして日本酒なら米の旨味と甘み。これらをレモンサワーのベースにしたらどうなるか。
実はビールベースのレモンサワー(レモンビール)はすでにヨーロッパで一般的だし、白ワインにレモンとソーダを加えるスプリッツァーも定番カクテルだ。醸造酒とレモンの組み合わせは決して突飛ではない。ただ、日本酒をレモンサワーのベースに使うという発想は、まだほとんど世の中に浸透していない。清酒ベースのレモンサワーの素を実際に使ってみた感覚を別記事にまとめているが、焼酎ベースとは味の構造がまるで違う。
日本酒は米と水と麹から造られる。特に大吟醸は精米歩合50%以下まで米を削り、低温で長期間かけて丁寧に醸す。結果として生まれるのは、華やかな吟醸香とふくよかな米の甘み、そしてきれいに切れる後味だ。この特性がレモンと出会うと、焼酎ベースとはまったく異なる世界が開ける。
蒸留酒のドライさを離れ、醸造酒の旨味でレモンを包む。日本酒ベースのレモンサワーは、その発想から生まれた。
大吟醸ベースのレモンサワーは、何が違うのか
焼酎ベースのレモンサワーを飲んだとき、味の構成は「レモンの酸味+炭酸の爽快感+アルコールのキック」というシンプルな三層構造になっている。ベース酒自体の味はほぼ感じない。それが焼酎の良さでもあるが、味の深みという点では限界がある。
大吟醸ベースにすると、ここに「米の甘み」と「吟醸香」という二つの層が加わる。レモンの酸味に米の甘みが寄り添うことで、口の中でまろやかな円を描くような味わいになる。酸味がとがらず、やわらかく広がる感覚は、焼酎ベースとはまた違う。
後味も大きく異なる。焼酎ベースはスパッと切れるのが特徴だが、大吟醸ベースはレモンの余韻が米の甘みとともにゆるやかに消えていく。「きれいに切れる」のではなく「きれいに残る」という表現が近い。飲み終えた後の口の中に、ほのかにレモンと米の香りが漂う。これがたまらなく心地よい。
吟醸香とレモンの柑橘香の相性も特筆すべきだ。大吟醸の吟醸香にはリンゴやバナナを思わせるフルーティーな成分が含まれており、レモンの柑橘感と喧嘩せず、むしろフルーツカクテルのような華やかさを生み出す。焼酎の無味無臭がレモンの「引き立て役」だとすれば、大吟醸はレモンの「共演者」だ。
焼酎がレモンの引き立て役に徹するのに対し、大吟醸はレモンと共演する。この違いは飲めばすぐにわかる。
焼酎のアルコール感が苦手な人へ
レモンサワーは好きだけれど、焼酎独特のアルコール感がちょっと苦手。そういう人は意外と多い。特に女性やお酒をあまり飲まない人のなかには、「レモンサワーは好きだがもう少しやわらかい味だったらいいのに」と感じている層が確実にいる。
大吟醸ベースのレモンサワーは、まさにその悩みに応える存在だ。蒸留酒のツンとくるアルコール感がなく、米由来のまろやかさがアルコールを包み込むため、同じ度数でも口当たりがやわらかい。ソーダで割ればアルコール度数は6〜7%程度に落ち着くが、体感的にはさらに軽く感じるという声は多い。
「お酒が弱いわけではないが、強い酒は好まない」という人。「ビールは苦くて飲めないが、レモンサワーなら飲める」という人。「居酒屋の最初の一杯はいつもレモンサワー」という人。こうした方々が大吟醸ベースのレモンサワーを飲むと、多くの場合「これ、今まで飲んでたのと全然違う」という反応になる。
焼酎のアルコール感が壁になっていた人にとって、大吟醸ベースは新しい入口になる。
クラッチュ 湘南潮彩レモン40という回答
「焼酎以外のレモンサワーの素が欲しい」「日本酒ベースのレモンサワーを家で試してみたい」。そう思って調べてみると、選択肢が極めて少ないことに気づくはずだ。ウォッカベースやジンベースのレモンサワーの素はほぼ市販されておらず、バーに行くしかない。日本酒ベースも、京都の佐々木酒造がKURANDで「ちょっと贅沢な大吟醸レモンサワーの素」を出しているのが目につく程度だ。
そのなかで、神奈川県秦野市の金井酒造店が造る「クラッチュ 湘南潮彩レモン40」は、大吟醸ベースのレモンサワーの素として際立った存在だ。明治元年創業の蔵元が、自家醸造の大吟醸をベースに、湯河原産の国産レモン果汁を40%配合して仕込んでいる。
果汁40%という数字がどれほどの濃さかというと、市販のレモンサワーの素の果汁率が3〜10%であることを思えば、4倍から13倍にあたる。ソーダで割ってもレモンの味がしっかり残り、大吟醸の米の甘みとあいまって、まるでレモンと日本酒のマリアージュのような一杯に仕上がる。
アルコール度数は25度で、ソーダ割りにすると6〜7度程度。1杯あたりの使用量は約30mlで、720mlのボトルから24杯が作れるため、1杯あたりのコストは約115円だ。「大吟醸ベース・果汁40%・湯河原産レモン100%」というスペックを考えれば、一杯115円は驚くほど現実的な価格だと言える。
蔵元直送のオンラインストアで購入できるほか、一部の実店舗でも取り扱いがある。焼酎ベースしか知らなかった人にこそ、一度試してみるといい商品だ。
大吟醸で仕込み、果汁40%を実現したクラッチュは、「焼酎以外のレモンサワー」という問いに対する蔵元の回答だ。
おすすめの飲み方と合わせる料理
大吟醸ベースのレモンサワーは、焼酎ベースとは料理との合わせ方も変わってくる。焼酎ベースが唐揚げや焼き鳥といった濃い味の料理と相性がよいのに対し、大吟醸ベースはもう少し繊細な料理とも合わせやすい。
白身魚の刺身やカルパッチョとの相性は抜群だ。大吟醸の吟醸香とレモンの酸味が、魚の旨味を引き立てる。焼酎ベースのレモンサワーでは刺身の味が負けてしまうことがあるが、大吟醸ベースなら穏やかに寄り添う。
クリーム系のパスタやグラタンにも意外と合う。脂肪分をレモンの酸味がさわやかに切り、大吟醸の米の甘みがクリームのコクと共鳴する。和食に限定されないのが面白いところだ。
もちろん、唐揚げとの組み合わせも悪くない。ただし焼酎ベースの「油をバッサリ切る」感覚とは少し違い、大吟醸ベースは「油をやわらかく包んで流す」という表現が近い。好みが分かれるところだが、両方を知った上で使い分けるのが最も楽しい。
焼酎ベースが「リセットする」酒なら、大吟醸ベースは「調和する」酒。料理との関係性そのものが変わる。
大吟醸ベースなら割り方ごとの変化も大きいので、美味しいレモンサワーの作り方と割り方10パターンも合わせて読むと、家での一杯の幅が広がると思う。
常識を疑うことで広がる家飲み
レモンサワーのベースは焼酎。その常識を疑ってみると、家飲みの世界は一気に広がる。ウォッカやジンで作るモダンなレモンサワーもあるし、大吟醸で仕込む和のレモンサワーもある。同じ「レモンサワー」という名前でも、ベース酒を変えるだけでまったく別の飲み物になるのだ。
なかでも大吟醸ベースは、最もユニークなポジションにあるといっていい。蒸留酒のドライさとは対極にある米の甘み、吟醸香とレモンのハーモニー、そしてきれいに消えていく後味。焼酎ベースの常識のなかでは出会えなかった味が、ここにある。
金井酒造店のクラッチュ 湘南潮彩レモン40は、大吟醸ベース・果汁40%・湯河原産レモン100%という仕様で、焼酎以外のレモンサワーを探している人に試してみるといい一本だ。蔵元直送のオンラインストアから購入できる。
焼酎以外のレモンサワーを知ることは、レモンサワーそのものの味わいを再発見することだ。大吟醸ベースのクラッチュで、その一歩を踏み出してみるのもいい。
レモンサワーをきっかけに「焼酎と日本酒、そもそも何が違うの?」と思った方には、焼酎好きが日本酒にハマるルートも読んでみるといい。焼酎の好みから逆算して、合う日本酒の見つけ方をまとめている。
神奈川・湯河原産レモン果汁40%、大吟醸ベースのレモンサワーの素について詳しくはこちら。