春夏秋冬の笹 — 創業者・佐野りきと、季節を醸す酒

明治元年、1868年。金井酒造店が秦野の地で産声を上げた年は、日本そのものが大きく変わり始めた年でもありました。その蔵を起こした人物の名前は、佐野りき。女性でした。

明治初頭に女性が酒蔵を創業するということが、どれほどのことだったか。記録に残る言葉は多くありません。しかし秦野という土地で、丹沢山系から湧き出る水を糧に、一から酒造りを始めた佐野りきの意志は、百五十余年を経た今も蔵の底流に静かに流れています。強さ、というよりは、しなやかさ。季節に逆らわず、水の流れに従いながら、それでも前へ進む力。

金井酒造店は、醸造する酒に音楽を聴かせる「音楽醸造」から生まれた蔵です。いまは全量ではなく一部の酒が音楽を聴きながら育っていますが、佐野りきが打ち始めた鼓の拍子は、季節をめぐりながら、今も鳴り続けています。春夏秋冬の笹は、その一年をかけて奏でる楽章——「ササノシラベ」の季節酒シリーズです。各ボトルには佐野りきをモチーフにしたラベルがあしらわれ、創業者への敬意と、酒造りが季節と不可分であることの宣言が込められています。

春笹 — 雪解けの清廉

春笹はうすにごり純米吟醸の生酒として、春の訪れを告げます。火入れをしていない生の酒は、開けた瞬間から蔵の空気をまとっています。うっすらと白濁した液体は、秦野の春の朝靑に似ています。丹沢の山々にまだ雪が残るころ、その雪解け水が地に沈み込み、やがて湧き出てくる水の清廉さが、この一本にあります。

ササノシラベ 春笹うすにごり 純米吟醸生

ササノシラベ 春笹うすにごり 純米吟醸生

春だけの季節限定。やわらかく軽い口当たりの、うすにごり生酒。よく冷やして、桜の季節に。薄張りのガラス猞口がよく合います。

720ml ¥2,200(税込)/1800ml ¥3,740

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夏笹 — しゅわりと弾ける泡

夏笹は微発泡の純米発泡生。グラスに注ぐと細かな泡が立ち上がります。日本酒をシュワッと飲む夏、という提案は、まだ新しい文化かもしれません。しかし秦野の夏に、冷やした夏笹を一口飲んだとき、それ以外の飲み方を思いつかなくなります。

夏笹しゅわり 純米発泡生

夏笹しゅわり 純米発泡生

夏だけの季節限定。しゅわっと微発泡する、低アルコールの純米発泡生酒。スパークリングワインのような感覚で、暑い日の一杯目にぴったりです。

300ml ¥1,100(税込)/720ml ¥2,200

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秋笹・冬笹 — 巡る季節の続き

秋には秋笹。春に仕込んだ酒を夏のあいだタンクで眠らせ、秋口に出すひやおろしです。夏を越えることで角が取れ、丸くなった旨みが詰まっています。食欲の秋に、料理を引き立てながらも自分の存在を主張する一本です。

冬には冬笹。仕込みの最盛期を迎えた蔵の温度と湿度の中で生まれるうすにごりは、鍋料理や塩味の強いつまみと合わせると、驚くほど互いを高め合います。

それぞれが、秦野の四季を映しています。丹沢の雪解けが春笹になり、盆地の夏の熱気が夏笹になり、山の色が変わるころに秋笹が届き、冬の澄んだ空気の下で冬笹が仕込まれる。季節の酒は数量限定のため、入荷状況はオンラインショップやメルマガでご案内しています。

一年を、飲み通す

佐野りきが蔵を起こしたのも、この土地の水と季節の巡りを信じたからではないでしょうか。記録には残らない動機を想像するとき、春夏秋冬の笹を飲みながら考えると、なぜかすとんと腐に落ちる気がします。

一年をかけて4本と付き合う。それは、秦野の一年を飲み通すことでもあります。鼓の基調の上で、季節がめぐるたびに違う調べが鳴る。それが、春夏秋冬の笹という楽章です。

佐野りきが見ていた丹沢の山は、今も変わらず秦野の空に続いています。

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