笹の物語 — 音楽醸造の蔵が、過去のすべてを未来へ連れていく
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金井酒造店のお酒には、ひとつの言葉が流れています。「笹」です。白笹鼓、黒笹、碧笹、緋笹、春笹、夏笹。そしてササノツヅミ、ササノシラベ、ササノネ、ササノメグリ。名前を並べてみると、すべてに笹が宿っていることに気づきます。
この「笹」に込めたものを、ここで一度、まとめて書いておきたいと思います。
音楽を聴かせて醸す蔵
金井酒造店は、醸造する酒に音楽を聴かせる「音楽醸造」から生まれた蔵です。いまは全量ではなく、一部の酒がタンクで音楽を聴きながら育っていますが、その思想はいまも酒の名前のなかに流れています。
鼓(つづみ)、調べ、音、巡り。シリーズの名前に並ぶこれらの言葉は、すべて音楽の言葉です。蔵が奏でる一曲の中で、それぞれの酒が違うパートを受け持っている——そんなふうに名前はつけられています。
笹は、白笹稲荷に根ざす蔵の名
「笹」の出どころは、秦野市今泉の白笹稲荷神社です。関東三大稲荷のひとつとも称されるこの古社の名から、代表銘柄「白笹鼓」は生まれました。蔵の根は、この土地の信仰と、丹沢の伏流水にあります。
笹は、変わりません。何があっても変わらない、蔵の根のような言葉です。
鼓 — 150年、打ち続けてきた拍子
代表銘柄「白笹鼓」の「鼓」は、その音楽の基調です。能や雅楽で拍子をとる打楽器のように、明治元年から変わらず打ち続けてきた、蔵の鼓動。丹沢の水を使い、米と発酵に向き合う。そのビートが、すべての土台にあります。
定番の白笹鼓(ササノツヅミ)は、この鼓そのもの。何度聴いても安心する、変わらない拍子です。
変わるのは、色
笹が変わらないなら、何が変わるのか。色です。
白笹鼓は、一本ごとにラベルの色が移ろいます。純米、本醸造、大吟醸——味わいの違いが、色の違いになって並びます。そしてブランド全体では、名前の色が移ろう。白笹、黒笹、碧笹、緋笹。白は定番の鼓、黒は挑戦、碧と緋は甘酸っぱい低アルコールの新しい世界。
けれど色がどれだけ変わっても、その根にあるのは同じ笹、同じ鼓動です。色は表情で、笹は背骨。表情がいくつ増えても、背骨は一本のまま変わりません。
それぞれの楽章 — 調べ、音、巡り
鼓という基調の上に、蔵はいくつもの楽章を重ねてきました。
ササノシラベは、調べ=旋律。「調べる」という言葉でもあるとおり、定番の外側で季節を映し、新しい味を探る、季節と挑戦のメロディです。ササノネは、音。日本酒という楽譜にはなかった音を鳴らす、もうひとつの響き——リキュールも、実験酒も、ここに属します。ササノメグリは、巡り=めぐり逢い。低アルコールという新しい旋律で、これまで日本酒と出会わなかった人とめぐり逢うための酒です。
ひとつの蔵が、鼓を打ちながら、調べを奏で、新しい音を鳴らし、人とめぐり逢う。笹という名前は、その全部を束ねる一本の旋律です。
過去のすべてを、未来へ連れていく
金井酒造店は、一度、生まれ変わった蔵です。けれど、生まれ変わるとは、過去を捨てて新しく始めることではありませんでした。
白笹鼓という鼓が刻んできた150年の拍子を、ひとつも手放さない。これまで積み上げてきた技術も、記憶も、土地との縁も、すべて抱えたまま、未来へ連れていく。それが、この蔵が選んだ覚悟です。
その覚悟が最もはっきり表れているのが、「ミライザケ」という名前です。未来を醸す。鼓の上に重ねる、未来へ向けた新たな楽章。過去の全部を抱いたまま、次の百年へ向かって、蔵は今日も音を鳴らしています。
笹の物語を、もっと
それぞれの楽章には、それぞれの物語があります。気になった一本から、ぜひ覗いてみてください。
- 白笹鼓(ササノツヅミ) — 定番という名の信頼
- 黒笹 Eden・Revive・Classic — 白笹鼓の蔵が造る「挑戦」の日本酒
- ササノシラベ — 挑戦と季節の酒
- ササノメグリ — 低アルコール日本酒という新しい選択
- ササノネ — 日本酒蔵が奏でる、もうひとつの音
- ミライザケ — テロワールを醸す、金井酒造店の実験室