CSRとCSV、ESGは何が違うのか — 出典で確かめた言葉の整理

地域貢献や社会貢献の話をしていると、途中から言葉が増えます。CSR、CSV、ESG。似た文脈で出てくるのに、説明しているページごとに書いてあることが少しずつ違う——そこで混乱しますよね。

この記事では、出典をたどれる説明だけを並べます。論者によって使い方が割れているところは、割れていると書きます。そのうえで、言葉の整理が実務の何に効くのかを最後に書きます。

なお、この記事は言葉の意味の整理までです。「CSRとは何か」を広く解説するものではありませんし、何かの評価が上がる下がるという話もしません。

※ 写真はイメージです

共醸パートナーは、個人と法人でプランが分かれています

目次

CSR — 責任ある行動と、説明責任

厚生労働省は、労働政策のページでCSR(企業の社会的責任)をこう説明しています。企業活動において社会的公正や環境などへの配慮を組み込み、従業員・投資家・地域社会などの利害関係者に対して責任ある行動をとるとともに、説明責任を果たしていくことを求める考え方だ、と。

ここで大事なのは、寄付やボランティアだけを指す言葉ではないという点です。本業のやり方の中に配慮を組み込むことと、それを説明することの両方が入っています。

ESG — 投資家が見るための3文字

ESGは、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の説明によれば、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の頭文字です。

もともとは投資の文脈の言葉で、同じ説明のなかでは、2006年に国連が機関投資家に対してESGを投資プロセスに組み入れる「責任投資原則(PRI)」を提唱したことをきっかけに広まった、とされています。

つまりESGは、企業が何をするかというより、投資家が企業をどう見るかの枠組みとして出てきた言葉です。ここがCSRとの手触りの違いで、主語が違う、と考えるとすっきりします。

CSV — 原典は2011年の論文

CSVは、Michael E. Porter と Mark R. Kramer の論文「Creating Shared Value」(Harvard Business Review 2011年1–2月号)が原典です。

日本語では「共通価値の創造」と訳されます(農林水産政策研究所の研究課題名にもこの訳が使われています)。ただし訳語や使い方には揺れがあり、別の訳をあてている資料もあります。どれかひとつが正しい、と言い切れる状態ではないので、ここでは訳語を断定しません。

言葉の中身としては、社会の課題への取り組みを、企業本来の経済的な活動と切り離さずに行う、という方向を指して使われています。

並べると、主語と置きどころが違う

3つを比べると、争っている言葉ではないことが見えてきます。

言葉 主語 出どころ 何を言っているか
CSR 企業 厚生労働省の説明 配慮を組み込み、説明責任を果たす
CSV 企業 2011年のHBR論文 社会の課題への取り組みを本業と切り離さない
ESG 投資家 GPIFの説明(PRIが起点) 環境・社会・ガバナンスの要素を見て投資する

CSRとCSVは企業側の言葉、ESGは投資家側の言葉。だから「どれをやるか」ではなく、誰に向けて話しているかで言葉を選ぶのが実際のところだと思います。

対立しているのではなく、立っている場所が違う。

※ 写真はイメージです

言葉より、来年も続けられるかで決める

ここまで整理しておいてなんですが、地域との関わりを始めるかどうかの判断に、この3つの言葉はあまり効きません。言葉を決めてから活動を選ぶと、たいてい続かないからです。

先に決まるのは、いつも具体のほうです。どこの誰と関わるのか。誰が動くのか。来年も同じことができるのか。やめたくなったらどう抜けるのか。それが決まったあとで、社内や社外に説明するときに、CSRという言葉を使うのか、別の言い方をするのかを選べば足ります。

たとえば、わたしたちがやっている共醸パートナーの法人向けは、金井酒造店との年間契約です。締結日から1年で、お申し出がなければ同じ条件で1年続きます。これをCSRと呼ぶかどうかは各社の判断で、呼び方が変わっても契約の中身は変わりません。

選択肢そのものを見比べたい場合は、企業の地域貢献は何から始める?に5つ並べています。社内の通し方は稟議・予算・報告の通し方、協賛を頼まれたときの考え方はこちら、酒蔵と組むかたちは法人向けの共醸パートナーにまとめました。

※ 各語の説明は2026年9月20日に、厚生労働省「CSR(企業の社会的責任)」、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)「ESG投資」、Harvard Business Review「Creating Shared Value」(2011年1–2月号)、農林水産政策研究所の研究課題ページで確認しました。

言葉は後から付いてくる。

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