クラフトリキュール
高級レモンサワーとは|大吟醸ベース・果汁40%、ギフトにも選ばれる一本【蔵元】
「高級レモンサワー」と検索する人が求めているのは、缶チューハイの一段上にある一杯だと思う。家でゆっくり飲む特別な一杯だったり、お酒好きへのギフトやプレゼントだったり。スーパーやコンビニのレモンサワーが500〜800円で並ぶなかで、わざわざ「高級」を探すのには理由がある。レモンサワーで高級なものを選ぶなら、缶や素のラベルに書かれたスペックを、いつもより少しだけ丁寧に見てみるといい。ここでは、何をもって高級レモンサワーと呼ぶのか、そしてギフトに選ぶならどこを見ればいいのかを、蔵元の視点で整理してみたい。 高級レモンサワーとは — 普通のレモンサワーと何が違うのか高級レモンサワーに明確な定義はない。ただ、缶やスーパーの素と一線を画す一杯には、共通する特徴がある。ベースのお酒に個性があること、レモン果汁をたっぷり使っていること、香料や糖類でごまかしていないこと。この三つが揃うと、同じ「レモンサワー」でも味の密度がまるで変わる。そもそもレモンサワーとは何かという定義に立ち返ると、「高級」がどこで生まれるのかも見えてくる。 たとえば本記事で取り上げる金井酒造店の「クラッチュ 湘南潮彩レモン40」は、大吟醸ベース+醸造アルコールに湯河原産レモン果汁を40%使い、糖類・香料・酸味料は不使用。ソーダで割れば、家庭でそのまま高級レモンサワーが一杯できあがる。価格は720mlで2,750円(税込)。1本から24杯ぶん作れるので、一杯あたりは約115円だ。詳しくは後半で計算する。 高級レモンサワーの正体は「ベース酒の質×高い果汁率×無添加」。価格ではなく中身で決まる。 市販のレモンサワーの素は、なぜあの価格で出せるのかまず前提として、ドラッグストアやスーパーに並んでいるレモンサワーの素の多くは、果汁率が3〜10%程度だ。残りの大部分はベースとなる焼酎、糖類、酸味料、そして香料で構成されている。レモンの「風味」は感じるが、それは本物のレモン果汁というよりも、香料と酸味料が作り出したレモン感であることが多い。 ベースの酒は連続式蒸留焼酎、いわゆる甲類焼酎が主流だ。クセがないぶん万人に受けるが、裏を返せば酒としての個性はほとんどない。原料コストを抑えられるため、500〜800円という店頭価格が実現する。大量生産で全国流通する商品は、こうした設計にならざるを得ない。 それ自体が悪いわけではない。仕事帰りに気軽に一杯、という用途には十分だ。ただ、週末にゆっくり楽しむ一杯や、来客に出す一杯、自分へのご褒美の一杯に、同じもので本当に満足できるかどうか。そこが「普通」と「高級」の分かれ目になる。 レモンサワーの素に2,000円以上を払う価値があるとしたら、それはベース酒・果汁率・レモンの産地、すべてが違うからだ。 高級レモンサワーを見極める四つの基準高級を名乗る商品は増えてきたが、何をもって高級とするかは曖昧なままだ。ここでは選ぶときに見るべきポイントを四つに整理しておく。 まず一つ目はベースとなるお酒だ。焼酎ベースが圧倒的多数を占めるなかで、日本酒をベースにした商品がごくわずかに存在する。特に大吟醸を使ったものは、米の甘みとレモンの酸味が独特のバランスを生む。焼酎のドライな切れ味とはまったく異なる飲み口になるため、一度試す価値がある。 二つ目は果汁率。先述のとおり市販品は3〜10%が相場だが、プレミアム帯の商品になると20%を超えるものが出てくる。果汁率が高いほどレモン本来の酸味・苦味・甘みが感じられ、ソーダで割ったときの味の奥行きがまるで違う。果汁40%ともなると、もはやレモンジュースにお酒を加えたような濃密さだ。 三つ目はレモンの産地。輸入レモンは収穫後に防カビ剤(ポストハーベスト)が使われることが多い。国産レモンを100%使用している商品は、皮ごと搾っても安心感がある。広島・愛媛が国産レモンの二大産地として知られるが、神奈川県の湯河原も温暖な気候を活かしたレモン栽培が盛んで、近年注目を集めている。 四つ目は添加物の有無。香料・着色料・保存料を使わない商品は、レモンと酒本来の味だけで勝負することになる。ごまかしが効かないぶん、原料の質が直接味に出る。逆に言えば、無添加を謳える商品は原料に自信がある証拠でもある。 ベース酒・果汁率・レモン産地・添加物。この四つを確認するだけで、「高いだけの商品」と「高い理由がある商品」を見分けられる。 大吟醸で仕込むという発想レモンサワーのベース酒といえば焼酎が常識だった。しかしここ数年、日本酒蔵が自らの醸造技術を活かしてリキュールやサワーの素を開発する動きが出てきている。京都の佐々木酒造が手がける「ちょっと贅沢な大吟醸レモンサワーの素」はKURANDなどで購入でき、日本酒ベースのレモンサワーという新しい選択肢を提示した。 そしてもう一つ、神奈川県秦野市の金井酒造店が造る「クラッチュ 湘南潮彩レモン40」がある。こちらは大吟醸をベースに、湯河原産の国産レモン果汁を40%配合した製品だ。アルコール度数は25度で、ソーダや水で割って飲む設計になっている。 大吟醸ベースの高級レモンサワーがなぜ珍しいのか。それは大吟醸の製造コストにある。精米歩合50%以下まで米を削り、低温でじっくり醸す大吟醸は、日本酒のなかでも最も手間と時間がかかる。それをレモンサワーのベースに使うのは、蔵元にとって相当な覚悟が要る判断だ。金井酒造店は明治元年創業の蔵で、丹沢山系の伏流水と秦野の風土のなかで酒造りを続けてきた。その蔵元が「大吟醸の味を家庭でもっと気軽に楽しんでほしい」という思いで開発したのがクラッチュだという。 果汁40%という数字も、業界の常識から見れば異例だ。市販品の4〜13倍にあたる。湯河原産レモンの果汁をこれだけ贅沢に使えるのは、地元の農家と直接つながりを持つ小規模蔵元だからこそだろう。大手メーカーが同じことをやろうとしても、安定した量の国産レモンを確保するのは容易ではない。 大吟醸ベース・果汁40%・湯河原産レモン100%。この三つが揃う高級レモンサワーは、現時点でクラッチュ以外にほぼ見当たらない。 一杯あたりのコストを冷静に計算するクラッチュ 湘南潮彩レモン40は720mlで2,750円(税込)だ。レモンサワーとしては明らかに高い。しかし、この1本から何杯飲めるかを計算してみると印象が変わる。 推奨の割り方はクラッチュ1に対してソーダ3〜4。一杯あたりのクラッチュ使用量は約30mlで、720mlのボトルからは24杯が作れる。2,750円を24杯で割ると、1杯あたり約115円だ。ここにソーダ代を加えても150円前後。居酒屋でプレミアムレモンサワーを頼めば600〜800円はするから、5分の1以下で済む計算になる。 しかもこの115円のレモンサワーは、大吟醸ベースで果汁40%、湯河原産レモン100%という仕様だ。同じスペックのレモンサワーを居酒屋で飲もうとしても、そもそもメニューに存在しない。家でしか飲めない味が一杯115円。こう考えると、2,750円というボトル価格の見え方がだいぶ変わってくるのではないだろうか。 もちろん、市販の500円の素なら一杯あたり60〜70円で済む。コスト最優先なら市販品を選ぶべきだ。しかし「少し高くても、確実にうまい一杯が飲みたい」という人にとっては、115円は十分に合理的な投資だと思う。 2,750円のボトルは高く見えるが、一杯115円の大吟醸レモンサワーと考えれば、居酒屋の5分の1以下だ。 ギフト・プレゼントに選ばれる高級レモンサワー父の日やお中元、誕生日プレゼントに「お酒を贈りたいが、何を選べばいいかわからない」という悩みは尽きない。日本酒やワインは好みが分かれるし、ビールは量販品のイメージがつきまとう。...
高級レモンサワーとは|大吟醸ベース・果汁40%、ギフトにも選ばれる一本【蔵元】
「高級レモンサワー」と検索する人が求めているのは、缶チューハイの一段上にある一杯だと思う。家でゆっくり飲む特別な一杯だったり、お酒好きへのギフトやプレゼントだったり。スーパーやコンビニのレモンサワーが500〜800円で並ぶなかで、わざわざ「高級」を探すのには理由がある。レモンサワーで高級なものを選ぶなら、缶や素のラベルに書かれたスペックを、いつもより少しだけ丁寧に見てみるといい。ここでは、何をもって高級レモンサワーと呼ぶのか、そしてギフトに選ぶならどこを見ればいいのかを、蔵元の視点で整理してみたい。 高級レモンサワーとは — 普通のレモンサワーと何が違うのか高級レモンサワーに明確な定義はない。ただ、缶やスーパーの素と一線を画す一杯には、共通する特徴がある。ベースのお酒に個性があること、レモン果汁をたっぷり使っていること、香料や糖類でごまかしていないこと。この三つが揃うと、同じ「レモンサワー」でも味の密度がまるで変わる。そもそもレモンサワーとは何かという定義に立ち返ると、「高級」がどこで生まれるのかも見えてくる。 たとえば本記事で取り上げる金井酒造店の「クラッチュ 湘南潮彩レモン40」は、大吟醸ベース+醸造アルコールに湯河原産レモン果汁を40%使い、糖類・香料・酸味料は不使用。ソーダで割れば、家庭でそのまま高級レモンサワーが一杯できあがる。価格は720mlで2,750円(税込)。1本から24杯ぶん作れるので、一杯あたりは約115円だ。詳しくは後半で計算する。 高級レモンサワーの正体は「ベース酒の質×高い果汁率×無添加」。価格ではなく中身で決まる。 市販のレモンサワーの素は、なぜあの価格で出せるのかまず前提として、ドラッグストアやスーパーに並んでいるレモンサワーの素の多くは、果汁率が3〜10%程度だ。残りの大部分はベースとなる焼酎、糖類、酸味料、そして香料で構成されている。レモンの「風味」は感じるが、それは本物のレモン果汁というよりも、香料と酸味料が作り出したレモン感であることが多い。 ベースの酒は連続式蒸留焼酎、いわゆる甲類焼酎が主流だ。クセがないぶん万人に受けるが、裏を返せば酒としての個性はほとんどない。原料コストを抑えられるため、500〜800円という店頭価格が実現する。大量生産で全国流通する商品は、こうした設計にならざるを得ない。 それ自体が悪いわけではない。仕事帰りに気軽に一杯、という用途には十分だ。ただ、週末にゆっくり楽しむ一杯や、来客に出す一杯、自分へのご褒美の一杯に、同じもので本当に満足できるかどうか。そこが「普通」と「高級」の分かれ目になる。 レモンサワーの素に2,000円以上を払う価値があるとしたら、それはベース酒・果汁率・レモンの産地、すべてが違うからだ。 高級レモンサワーを見極める四つの基準高級を名乗る商品は増えてきたが、何をもって高級とするかは曖昧なままだ。ここでは選ぶときに見るべきポイントを四つに整理しておく。 まず一つ目はベースとなるお酒だ。焼酎ベースが圧倒的多数を占めるなかで、日本酒をベースにした商品がごくわずかに存在する。特に大吟醸を使ったものは、米の甘みとレモンの酸味が独特のバランスを生む。焼酎のドライな切れ味とはまったく異なる飲み口になるため、一度試す価値がある。 二つ目は果汁率。先述のとおり市販品は3〜10%が相場だが、プレミアム帯の商品になると20%を超えるものが出てくる。果汁率が高いほどレモン本来の酸味・苦味・甘みが感じられ、ソーダで割ったときの味の奥行きがまるで違う。果汁40%ともなると、もはやレモンジュースにお酒を加えたような濃密さだ。 三つ目はレモンの産地。輸入レモンは収穫後に防カビ剤(ポストハーベスト)が使われることが多い。国産レモンを100%使用している商品は、皮ごと搾っても安心感がある。広島・愛媛が国産レモンの二大産地として知られるが、神奈川県の湯河原も温暖な気候を活かしたレモン栽培が盛んで、近年注目を集めている。 四つ目は添加物の有無。香料・着色料・保存料を使わない商品は、レモンと酒本来の味だけで勝負することになる。ごまかしが効かないぶん、原料の質が直接味に出る。逆に言えば、無添加を謳える商品は原料に自信がある証拠でもある。 ベース酒・果汁率・レモン産地・添加物。この四つを確認するだけで、「高いだけの商品」と「高い理由がある商品」を見分けられる。 大吟醸で仕込むという発想レモンサワーのベース酒といえば焼酎が常識だった。しかしここ数年、日本酒蔵が自らの醸造技術を活かしてリキュールやサワーの素を開発する動きが出てきている。京都の佐々木酒造が手がける「ちょっと贅沢な大吟醸レモンサワーの素」はKURANDなどで購入でき、日本酒ベースのレモンサワーという新しい選択肢を提示した。 そしてもう一つ、神奈川県秦野市の金井酒造店が造る「クラッチュ 湘南潮彩レモン40」がある。こちらは大吟醸をベースに、湯河原産の国産レモン果汁を40%配合した製品だ。アルコール度数は25度で、ソーダや水で割って飲む設計になっている。 大吟醸ベースの高級レモンサワーがなぜ珍しいのか。それは大吟醸の製造コストにある。精米歩合50%以下まで米を削り、低温でじっくり醸す大吟醸は、日本酒のなかでも最も手間と時間がかかる。それをレモンサワーのベースに使うのは、蔵元にとって相当な覚悟が要る判断だ。金井酒造店は明治元年創業の蔵で、丹沢山系の伏流水と秦野の風土のなかで酒造りを続けてきた。その蔵元が「大吟醸の味を家庭でもっと気軽に楽しんでほしい」という思いで開発したのがクラッチュだという。 果汁40%という数字も、業界の常識から見れば異例だ。市販品の4〜13倍にあたる。湯河原産レモンの果汁をこれだけ贅沢に使えるのは、地元の農家と直接つながりを持つ小規模蔵元だからこそだろう。大手メーカーが同じことをやろうとしても、安定した量の国産レモンを確保するのは容易ではない。 大吟醸ベース・果汁40%・湯河原産レモン100%。この三つが揃う高級レモンサワーは、現時点でクラッチュ以外にほぼ見当たらない。 一杯あたりのコストを冷静に計算するクラッチュ 湘南潮彩レモン40は720mlで2,750円(税込)だ。レモンサワーとしては明らかに高い。しかし、この1本から何杯飲めるかを計算してみると印象が変わる。 推奨の割り方はクラッチュ1に対してソーダ3〜4。一杯あたりのクラッチュ使用量は約30mlで、720mlのボトルからは24杯が作れる。2,750円を24杯で割ると、1杯あたり約115円だ。ここにソーダ代を加えても150円前後。居酒屋でプレミアムレモンサワーを頼めば600〜800円はするから、5分の1以下で済む計算になる。 しかもこの115円のレモンサワーは、大吟醸ベースで果汁40%、湯河原産レモン100%という仕様だ。同じスペックのレモンサワーを居酒屋で飲もうとしても、そもそもメニューに存在しない。家でしか飲めない味が一杯115円。こう考えると、2,750円というボトル価格の見え方がだいぶ変わってくるのではないだろうか。 もちろん、市販の500円の素なら一杯あたり60〜70円で済む。コスト最優先なら市販品を選ぶべきだ。しかし「少し高くても、確実にうまい一杯が飲みたい」という人にとっては、115円は十分に合理的な投資だと思う。 2,750円のボトルは高く見えるが、一杯115円の大吟醸レモンサワーと考えれば、居酒屋の5分の1以下だ。 ギフト・プレゼントに選ばれる高級レモンサワー父の日やお中元、誕生日プレゼントに「お酒を贈りたいが、何を選べばいいかわからない」という悩みは尽きない。日本酒やワインは好みが分かれるし、ビールは量販品のイメージがつきまとう。...
レモンサワーの素を炭酸以外で割る — 水・ジンジャーエール・お湯・牛乳、アレンジ全集
レモンサワーの素を買った。炭酸水で割った。美味しい。翌日も炭酸水で割った。その翌日も。 一週間後、ちょっと飽きてきた。 ※ 写真はイメージです レモンサワーの素は炭酸水専用ではない。水で割っても、ジンジャーエールで割っても、お湯で割っても、牛乳で割っても美味しい。むしろ割り材を変えるたびに別の飲み物に化ける。この記事では、炭酸以外のアレンジをまとめた。 割り材でここまで表情が変わるのは、そもそもレモンサワーとは何か——蒸留酒や醸造酒をレモンと炭酸で割る、というシンプルな構造だからこそだ。土台がシンプルだから、割り材を入れ替えるだけで世界が広がる。 水割り — 静かなレモンサワー炭酸のシュワシュワがない水割りは、レモンの味をじっくり感じられる飲み方だ。 グラスに氷を入れて、クラッチュを30ml、冷水を90〜120ml。炭酸に隠れていたレモンの甘みがそのまま出てくる。大吟醸ベースのまろやかさが水の中でゆっくり広がって、穏やかな一杯になる。 ※ 写真はイメージです 夜更けに一杯だけ飲みたいとき、水割りがいい。炭酸水を買い忘れた日でも水さえあれば作れる。 刺身や冷奴のような繊細な料理にも合う。炭酸の刺激がないから食材の味を邪魔しない。 ジンジャーエール割り — 甘辛のレモンジンジャージンジャーエールで割ると、生姜の辛みとレモンの酸味が重なって、居酒屋では出てこない一杯になる。 辛口(ウィルキンソン等)で割れば、ピリッとした大人の味。甘口(カナダドライ等)で割れば、デザート感覚の飲みやすさ。同じ「ジンジャーエール割り」でも辛口と甘口で全然違うから、両方試す価値がある。 BBQやキャンプで特に映える。炭火で焼いた肉の脂を、ジンジャーの辛みとレモンの酸味が洗い流してくれる。 お湯割り — 冬のホットレモンサワーレモンサワーは夏の飲み物、と思い込んでいる人が多い。お湯で割ると冬の最高のナイトキャップになる。 70〜80℃のお湯をゆっくり注ぐ。沸騰したてだとアルコールが飛びすぎる。大吟醸の香りが湯気と一緒にふわりと立ち上がって、ホットレモネードのような柔らかさにアルコールの温かみが加わる。 はちみつを少し垂らすと、風邪気味の夜にも嬉しい一杯になる。 鍋料理やおでんと合わせても面白い。温かい料理に温かい酒。冬の組み合わせとして、燗酒と並ぶ選択肢だ。 牛乳割り — 飲むヨーグルト風信じられないかもしれないが、レモンサワーの素を牛乳で割ると、飲むヨーグルトのような味になる。 レモンの酸が牛乳のタンパク質を凝固させて、とろりとした食感が生まれる。大吟醸ベースのまろやかさが牛乳のコクと溶け合って、デザートカクテルのような一杯になる。 ※...
レモンサワーの素を炭酸以外で割る — 水・ジンジャーエール・お湯・牛乳、アレンジ全集
レモンサワーの素を買った。炭酸水で割った。美味しい。翌日も炭酸水で割った。その翌日も。 一週間後、ちょっと飽きてきた。 ※ 写真はイメージです レモンサワーの素は炭酸水専用ではない。水で割っても、ジンジャーエールで割っても、お湯で割っても、牛乳で割っても美味しい。むしろ割り材を変えるたびに別の飲み物に化ける。この記事では、炭酸以外のアレンジをまとめた。 割り材でここまで表情が変わるのは、そもそもレモンサワーとは何か——蒸留酒や醸造酒をレモンと炭酸で割る、というシンプルな構造だからこそだ。土台がシンプルだから、割り材を入れ替えるだけで世界が広がる。 水割り — 静かなレモンサワー炭酸のシュワシュワがない水割りは、レモンの味をじっくり感じられる飲み方だ。 グラスに氷を入れて、クラッチュを30ml、冷水を90〜120ml。炭酸に隠れていたレモンの甘みがそのまま出てくる。大吟醸ベースのまろやかさが水の中でゆっくり広がって、穏やかな一杯になる。 ※ 写真はイメージです 夜更けに一杯だけ飲みたいとき、水割りがいい。炭酸水を買い忘れた日でも水さえあれば作れる。 刺身や冷奴のような繊細な料理にも合う。炭酸の刺激がないから食材の味を邪魔しない。 ジンジャーエール割り — 甘辛のレモンジンジャージンジャーエールで割ると、生姜の辛みとレモンの酸味が重なって、居酒屋では出てこない一杯になる。 辛口(ウィルキンソン等)で割れば、ピリッとした大人の味。甘口(カナダドライ等)で割れば、デザート感覚の飲みやすさ。同じ「ジンジャーエール割り」でも辛口と甘口で全然違うから、両方試す価値がある。 BBQやキャンプで特に映える。炭火で焼いた肉の脂を、ジンジャーの辛みとレモンの酸味が洗い流してくれる。 お湯割り — 冬のホットレモンサワーレモンサワーは夏の飲み物、と思い込んでいる人が多い。お湯で割ると冬の最高のナイトキャップになる。 70〜80℃のお湯をゆっくり注ぐ。沸騰したてだとアルコールが飛びすぎる。大吟醸の香りが湯気と一緒にふわりと立ち上がって、ホットレモネードのような柔らかさにアルコールの温かみが加わる。 はちみつを少し垂らすと、風邪気味の夜にも嬉しい一杯になる。 鍋料理やおでんと合わせても面白い。温かい料理に温かい酒。冬の組み合わせとして、燗酒と並ぶ選択肢だ。 牛乳割り — 飲むヨーグルト風信じられないかもしれないが、レモンサワーの素を牛乳で割ると、飲むヨーグルトのような味になる。 レモンの酸が牛乳のタンパク質を凝固させて、とろりとした食感が生まれる。大吟醸ベースのまろやかさが牛乳のコクと溶け合って、デザートカクテルのような一杯になる。 ※...
レモンサワーとは — 高果汁レモンサワーが「レモンサワー」の概念を変える
レモンサワーとは何か。答えはシンプルだ。焼酎やスピリッツなどの蒸留酒をレモン果汁と炭酸水で割った飲み物。それがレモンサワーだ。 ただ、この「シンプルな定義」と、実際に私たちが飲んでいる「レモンサワー」の間には、けっこうな距離がある。 レモンサワーの定義レモンサワーとは、蒸留酒(焼酎・スピリッツ等)をレモン果汁と炭酸水で割ったアルコール飲料のことだ。 「サワー」は英語のsour(酸っぱい)から来ていて、柑橘の酸味が入った炭酸割りの総称。レモンを使えばレモンサワー、グレープフルーツならグレフルサワー。 居酒屋のメニューで「サワー」と「チューハイ」が並んでいることがあるが、実質的には同じものだ。関東では「サワー」、関西では「チューハイ」と呼ぶ傾向がある程度の違いで、法律上の区分もない。 缶の「レモンサワー」は、どこまでレモンなのか定義では「レモン果汁で割った」飲み物だが、市販の缶レモンサワーの果汁率は平均5%前後。350ml缶に入っているレモン果汁は約17ml。大さじ1杯ちょっと。 残りの「レモンっぽさ」は香料と酸味料で作られている。レモンの香りを再現する香料、クエン酸やリンゴ酸で酸味を足す酸味料。この組み合わせで「レモンサワーの味」が構成されている。 悪いことではない。大量に安定した味を供給するにはこの方法が合理的だし、実際に美味しい。毎晩のリラックスタイムに缶を開ける習慣は、それはそれで良い。 ただ、「レモンサワー」と名乗りながら中身の95%がレモンではない、という事実は知っておいたほうがいい。 高果汁レモンサワーという別の世界果汁率が20%を超えると、味の印象が変わり始める。レモンの酸味に奥行きが出て、香料では再現できない果皮のほろ苦さが後味に残る。 40%になると、もはや別の飲み物だ。 クラッチュ 湘南潮彩レモン40は、レモン果汁を40%配合している。缶の8倍。炭酸水で割ると、グラスに注いだ瞬間から本物のレモンの香りが立つ。香料で作った香りとは質感が違う。 ベースは清酒(大吟醸)と醸造アルコール。一般的なレモンサワーが焼酎やスピリッツをベースにしているのと根本的に違う。大吟醸由来の米の旨みがレモンの酸味を支えるから、糖類を足さなくても味に厚みがある。 缶レモンサワー クラッチュ 果汁率 3〜5% 40% 糖類 あり なし 香料 あり なし ベース 焼酎/スピリッツ 清酒(大吟醸)+醸造アルコール レモン 輸入(多くは)...
レモンサワーとは — 高果汁レモンサワーが「レモンサワー」の概念を変える
レモンサワーとは何か。答えはシンプルだ。焼酎やスピリッツなどの蒸留酒をレモン果汁と炭酸水で割った飲み物。それがレモンサワーだ。 ただ、この「シンプルな定義」と、実際に私たちが飲んでいる「レモンサワー」の間には、けっこうな距離がある。 レモンサワーの定義レモンサワーとは、蒸留酒(焼酎・スピリッツ等)をレモン果汁と炭酸水で割ったアルコール飲料のことだ。 「サワー」は英語のsour(酸っぱい)から来ていて、柑橘の酸味が入った炭酸割りの総称。レモンを使えばレモンサワー、グレープフルーツならグレフルサワー。 居酒屋のメニューで「サワー」と「チューハイ」が並んでいることがあるが、実質的には同じものだ。関東では「サワー」、関西では「チューハイ」と呼ぶ傾向がある程度の違いで、法律上の区分もない。 缶の「レモンサワー」は、どこまでレモンなのか定義では「レモン果汁で割った」飲み物だが、市販の缶レモンサワーの果汁率は平均5%前後。350ml缶に入っているレモン果汁は約17ml。大さじ1杯ちょっと。 残りの「レモンっぽさ」は香料と酸味料で作られている。レモンの香りを再現する香料、クエン酸やリンゴ酸で酸味を足す酸味料。この組み合わせで「レモンサワーの味」が構成されている。 悪いことではない。大量に安定した味を供給するにはこの方法が合理的だし、実際に美味しい。毎晩のリラックスタイムに缶を開ける習慣は、それはそれで良い。 ただ、「レモンサワー」と名乗りながら中身の95%がレモンではない、という事実は知っておいたほうがいい。 高果汁レモンサワーという別の世界果汁率が20%を超えると、味の印象が変わり始める。レモンの酸味に奥行きが出て、香料では再現できない果皮のほろ苦さが後味に残る。 40%になると、もはや別の飲み物だ。 クラッチュ 湘南潮彩レモン40は、レモン果汁を40%配合している。缶の8倍。炭酸水で割ると、グラスに注いだ瞬間から本物のレモンの香りが立つ。香料で作った香りとは質感が違う。 ベースは清酒(大吟醸)と醸造アルコール。一般的なレモンサワーが焼酎やスピリッツをベースにしているのと根本的に違う。大吟醸由来の米の旨みがレモンの酸味を支えるから、糖類を足さなくても味に厚みがある。 缶レモンサワー クラッチュ 果汁率 3〜5% 40% 糖類 あり なし 香料 あり なし ベース 焼酎/スピリッツ 清酒(大吟醸)+醸造アルコール レモン 輸入(多くは)...
果汁40%のレモンサワーがやばい — 缶の8倍、糖類ゼロ、国産レモン100%
レモンサワーの果汁率を気にしたことはあるだろうか。 缶のレモンサワーの果汁率は平均5%前後。350ml缶に入っているレモン果汁は約17ml、大さじ1杯ちょっとだ。残りの「レモンっぽい味」は香料と酸味料で作られている。それ自体は悪いことではない。安定した味を手軽に楽しめるのが缶の良さだ。 ただ、果汁40%のレモンサワーを一度飲むと、5%との差に驚く。別の飲み物だった。 果汁率40%とは クラッチュ 湘南潮彩レモン40は、レモン果汁を40%配合したレモンサワーの素だ。 缶レモンサワーの果汁率(5%前後)の8倍にあたる。 30mlを炭酸水で割るだけで1杯のレモンサワーになるが、その30mlの中に12mlのレモン果汁が入っている計算だ。缶1本(350ml)に入っている果汁量(約17ml)に近い量が、たった30mlの中にある。だから炭酸水で割っても味が薄まらない。 グラスに注いだ瞬間からレモンの香りが立つ。香料で作った香りとは質感が違う。口に含むとレモンの酸味に奥行きがあり、果皮由来のほろ苦さが後味に残る。果汁がちゃんと入っているから出る味だ。 何が入っていて、何が入っていないか クラッチュの原材料は2つだけ。清酒(大吟醸)と醸造アルコールとレモン果汁。 缶レモンサワー(一般的) クラッチュ 果汁率 3〜5% 40% 糖類 あり なし 香料 あり なし 酸味料 あり なし レモン産地 記載なし 神奈川・湯河原産100% ベース スピリッツ/焼酎...
果汁40%のレモンサワーがやばい — 缶の8倍、糖類ゼロ、国産レモン100%
レモンサワーの果汁率を気にしたことはあるだろうか。 缶のレモンサワーの果汁率は平均5%前後。350ml缶に入っているレモン果汁は約17ml、大さじ1杯ちょっとだ。残りの「レモンっぽい味」は香料と酸味料で作られている。それ自体は悪いことではない。安定した味を手軽に楽しめるのが缶の良さだ。 ただ、果汁40%のレモンサワーを一度飲むと、5%との差に驚く。別の飲み物だった。 果汁率40%とは クラッチュ 湘南潮彩レモン40は、レモン果汁を40%配合したレモンサワーの素だ。 缶レモンサワーの果汁率(5%前後)の8倍にあたる。 30mlを炭酸水で割るだけで1杯のレモンサワーになるが、その30mlの中に12mlのレモン果汁が入っている計算だ。缶1本(350ml)に入っている果汁量(約17ml)に近い量が、たった30mlの中にある。だから炭酸水で割っても味が薄まらない。 グラスに注いだ瞬間からレモンの香りが立つ。香料で作った香りとは質感が違う。口に含むとレモンの酸味に奥行きがあり、果皮由来のほろ苦さが後味に残る。果汁がちゃんと入っているから出る味だ。 何が入っていて、何が入っていないか クラッチュの原材料は2つだけ。清酒(大吟醸)と醸造アルコールとレモン果汁。 缶レモンサワー(一般的) クラッチュ 果汁率 3〜5% 40% 糖類 あり なし 香料 あり なし 酸味料 あり なし レモン産地 記載なし 神奈川・湯河原産100% ベース スピリッツ/焼酎...
レモンサワーの素の選び方 — 果汁率とベース酒の原料で味がまるで変わる
レモンサワーの素を買おうとして、棚の前で迷った経験はないだろうか。 コンビニやスーパーのリキュール棚には、5種類から10種類のレモンサワーの素が並んでいる。パッケージにはどれも「本格」「濃い」「こだわり」と書かれていて、どれを選べばよいのか判断しにくい。価格は500円から1,000円くらいのものが中心で、ラベルの雰囲気もどこか似ている。しかし裏面の原材料表示をよく見ると、その中身は驚くほど違う。 この記事では、レモンサワーの素を「果汁率」と「ベースのアルコール」という二つの軸で整理する。市販されている製品の多くがどのような構造で作られているのか、そして果汁40%という数字がどれほど特異なのかを、できるだけ正直に書いてみたい。 市販のレモンサワーの素は、何でできているか レモンサワーの素の原材料表示を読んだことがある人は意外と少ない。 多くの製品に共通する構成は、「ベースのアルコール+糖類+酸味料+香料+果汁少々」だ。 ここで意外と見落とされるのが、ベースのアルコールが何から作られているかだ。市販のレモンサワーの素のほとんどは、焼酎(麦や芋を原料とする蒸留酒)か、醸造アルコール(サトウキビ由来の廉価な蒸留アルコール)をベースにしている。焼酎ベースなら麦や芋の風味がわずかに残り、醸造アルコールベースならほぼ無味無臭で、そのぶん香料や糖類で味を組み立てることになる。どちらにしても、ベース酒自体に味わいの個性はあまりない。コストを抑えて大量生産するには合理的な設計だ。 果汁率は製品によって異なるが、大手メーカーの主力商品は概ね3%から10%の範囲に収まっている。つまり、500mlのボトルに入っている果汁は15mlから50ml程度だ。レモン1個から搾れる果汁が約30mlと言われているから、ボトル1本にレモン半個から1個半程度の果汁しか入っていないことになる。 そして糖類と香料。果汁が少ないぶん、砂糖や果糖ブドウ糖液糖で甘みを足し、クエン酸で酸味を補い、香料でレモンの香りを演出する。市販のレモンサワーの素を飲んだあとに口に残るべたっとした甘さは、この糖類に由来している。 これは批判ではなく構造の説明だ。大量生産で安定した味を届けるには合理的な設計であり、その結果として手頃な価格が実現している。ただし、その構造を理解した上で「自分が求めているのはこれか」と考える余地はある。 果汁率が10倍違うと、何が起きるのか 果汁3%と果汁40%の差は、単なる数字の差ではない。飲んだときの体験がまるで違う。 まず香りが違う。果汁3%の製品をソーダで割ると、レモンの香りはするが、それは香料由来の均一な香りだ。果汁40%の製品を同じようにソーダで割ると、グラスに注いだ瞬間に果皮の精油を思わせる複雑な香りが立ち上る。均一ではない。季節やロットによって微妙に異なる、果物の香りだ。 次に酸味の質が違う。クエン酸で補強された酸味は鋭く、舌の上でピリッとくる。果汁由来の酸味はやわらかく広がり、飲み終わった後にすっと消えていく。同じ「すっぱい」でも、身体が受ける印象はかなり異なる。 そして甘みのバランスが変わる。果汁が少ない製品は糖類で味を整える必要があるため、飲み終わりにべたつく甘さが残りやすい。果汁が十分にあると、レモン自体が持つ天然の甘みと酸味が拮抗するため、糖類への依存度を下げることができる。結果として後味がきれいになる。 こうした違いは、文章で読んでもピンとこないかもしれない。ただ、一度並べて飲むと明確に分かる。家に市販のレモンサワーの素があれば、高果汁のものと飲み比べてみるといい。言葉で説明するより早い。 ベースが焼酎か大吟醸かという分岐点 レモンサワーの素を比較するとき、果汁率の次に見るべきなのが「ベースのアルコール」だ。 市販品のほぼすべてが焼酎または醸造アルコールをベースにしている。焼酎はクセが少ないためレモンの邪魔をしにくく、コストも抑えられる。合理的な選択であり、多くの人にとって不満のない味になる。 金井酒造店のクラッチュ 湘南潮彩レモン40は、ベースに清酒(大吟醸)を使っている。つまり、米から醸した酒がベースだ。 ここが焼酎や醸造アルコールとのかなり大きな違いになる。焼酎は麦や芋を蒸留したもの、醸造アルコールはサトウキビから作った工業用に近い蒸留酒。どちらも蒸留の過程で原料の風味がほとんど飛んでいる。一方、大吟醸は米を50%以上磨いて低温で長期間発酵させた醸造酒で、米由来のやわらかな甘みと吟醸香がそのまま残っている。蒸留酒と醸造酒では、ベースに残る味の情報量がまるで違う。 金井酒造店は神奈川県秦野市にある酒蔵だ。1868年の創業以来、日本酒を醸してきた蔵が、なぜレモンサワーの素を作ることになったのか。それは「日本酒の技術で、日本酒を飲まない人にも届く製品を作れないか」という問いから始まっている。 そしてもうひとつ、クラッチュが市販品とかなり違うのは糖類を添加していないことだ。市販のレモンサワーの素が糖類で甘みを作っているのに対し、クラッチュの甘みは大吟醸の米の甘みとレモン果汁の天然の甘みだけで成り立っている。香料も入っていない。レモンの香りはすべて果汁40%の湯河原産レモンそのものから来ている。 原材料を並べるとその差は一目瞭然だ。市販品のラベルには「醸造アルコール、果糖ブドウ糖液糖、レモン果汁、酸味料、香料」と並ぶ。クラッチュのラベルには「レモン(神奈川県産)、清酒、醸造アルコール」。これだけだ。 焼酎ベースの方が「ザ・レモンサワー」という味には近い。居酒屋で飲む馴染みのあの味だ。クラッチュは少し違う場所にいる。レモンサワーであることは確かだが、大吟醸の米の甘みが果汁の酸味を下から支え、糖類のべたつきがないぶん後味がきれいに消える。もう少しやわらかく、もう少し品のある飲み物になる。それを「上品」と感じるか「物足りない」と感じるかは好みの問題だが、一つ確かなことは、他のレモンサワーの素では代替できない味だということだ。 酒蔵がレモンサワーの素を作るまでの話 金井酒造店が日本酒だけを作っていた時代は長い。清酒「笹の薫」や「白笹鼓」を醸し、地元の人に飲まれてきた。しかしこの十数年、日本酒の国内消費量は減り続けている。若い世代がビールやハイボールやレモンサワーに向かうなかで、酒蔵としてどう存在し続けるかという問いは避けて通れない。 クラッチュの開発は、その問いへの一つの回答だった。日本酒を作る技術はそのまま活かし、製品の出口を変える。大吟醸をベースにレモンの果汁を合わせるという発想は、酒蔵だからこそ思いつくことであり、酒蔵だからこそ実現できることだった。 なぜ果汁40%という高い配合にしたのか。もっと果汁率を下げればコストを抑えられるし、万人受けする甘い味にもしやすい。それでも40%にこだわったのは、「レモンを搾って自分で作るレモンサワー」に匹敵する飲み物を目指したからだ。居酒屋のカウンターでレモンを半分に切ってジューサーで搾り、焼酎とソーダで割る。あの鮮烈な一杯に負けないものを、ボトルで届けたかった。...
レモンサワーの素の選び方 — 果汁率とベース酒の原料で味がまるで変わる
レモンサワーの素を買おうとして、棚の前で迷った経験はないだろうか。 コンビニやスーパーのリキュール棚には、5種類から10種類のレモンサワーの素が並んでいる。パッケージにはどれも「本格」「濃い」「こだわり」と書かれていて、どれを選べばよいのか判断しにくい。価格は500円から1,000円くらいのものが中心で、ラベルの雰囲気もどこか似ている。しかし裏面の原材料表示をよく見ると、その中身は驚くほど違う。 この記事では、レモンサワーの素を「果汁率」と「ベースのアルコール」という二つの軸で整理する。市販されている製品の多くがどのような構造で作られているのか、そして果汁40%という数字がどれほど特異なのかを、できるだけ正直に書いてみたい。 市販のレモンサワーの素は、何でできているか レモンサワーの素の原材料表示を読んだことがある人は意外と少ない。 多くの製品に共通する構成は、「ベースのアルコール+糖類+酸味料+香料+果汁少々」だ。 ここで意外と見落とされるのが、ベースのアルコールが何から作られているかだ。市販のレモンサワーの素のほとんどは、焼酎(麦や芋を原料とする蒸留酒)か、醸造アルコール(サトウキビ由来の廉価な蒸留アルコール)をベースにしている。焼酎ベースなら麦や芋の風味がわずかに残り、醸造アルコールベースならほぼ無味無臭で、そのぶん香料や糖類で味を組み立てることになる。どちらにしても、ベース酒自体に味わいの個性はあまりない。コストを抑えて大量生産するには合理的な設計だ。 果汁率は製品によって異なるが、大手メーカーの主力商品は概ね3%から10%の範囲に収まっている。つまり、500mlのボトルに入っている果汁は15mlから50ml程度だ。レモン1個から搾れる果汁が約30mlと言われているから、ボトル1本にレモン半個から1個半程度の果汁しか入っていないことになる。 そして糖類と香料。果汁が少ないぶん、砂糖や果糖ブドウ糖液糖で甘みを足し、クエン酸で酸味を補い、香料でレモンの香りを演出する。市販のレモンサワーの素を飲んだあとに口に残るべたっとした甘さは、この糖類に由来している。 これは批判ではなく構造の説明だ。大量生産で安定した味を届けるには合理的な設計であり、その結果として手頃な価格が実現している。ただし、その構造を理解した上で「自分が求めているのはこれか」と考える余地はある。 果汁率が10倍違うと、何が起きるのか 果汁3%と果汁40%の差は、単なる数字の差ではない。飲んだときの体験がまるで違う。 まず香りが違う。果汁3%の製品をソーダで割ると、レモンの香りはするが、それは香料由来の均一な香りだ。果汁40%の製品を同じようにソーダで割ると、グラスに注いだ瞬間に果皮の精油を思わせる複雑な香りが立ち上る。均一ではない。季節やロットによって微妙に異なる、果物の香りだ。 次に酸味の質が違う。クエン酸で補強された酸味は鋭く、舌の上でピリッとくる。果汁由来の酸味はやわらかく広がり、飲み終わった後にすっと消えていく。同じ「すっぱい」でも、身体が受ける印象はかなり異なる。 そして甘みのバランスが変わる。果汁が少ない製品は糖類で味を整える必要があるため、飲み終わりにべたつく甘さが残りやすい。果汁が十分にあると、レモン自体が持つ天然の甘みと酸味が拮抗するため、糖類への依存度を下げることができる。結果として後味がきれいになる。 こうした違いは、文章で読んでもピンとこないかもしれない。ただ、一度並べて飲むと明確に分かる。家に市販のレモンサワーの素があれば、高果汁のものと飲み比べてみるといい。言葉で説明するより早い。 ベースが焼酎か大吟醸かという分岐点 レモンサワーの素を比較するとき、果汁率の次に見るべきなのが「ベースのアルコール」だ。 市販品のほぼすべてが焼酎または醸造アルコールをベースにしている。焼酎はクセが少ないためレモンの邪魔をしにくく、コストも抑えられる。合理的な選択であり、多くの人にとって不満のない味になる。 金井酒造店のクラッチュ 湘南潮彩レモン40は、ベースに清酒(大吟醸)を使っている。つまり、米から醸した酒がベースだ。 ここが焼酎や醸造アルコールとのかなり大きな違いになる。焼酎は麦や芋を蒸留したもの、醸造アルコールはサトウキビから作った工業用に近い蒸留酒。どちらも蒸留の過程で原料の風味がほとんど飛んでいる。一方、大吟醸は米を50%以上磨いて低温で長期間発酵させた醸造酒で、米由来のやわらかな甘みと吟醸香がそのまま残っている。蒸留酒と醸造酒では、ベースに残る味の情報量がまるで違う。 金井酒造店は神奈川県秦野市にある酒蔵だ。1868年の創業以来、日本酒を醸してきた蔵が、なぜレモンサワーの素を作ることになったのか。それは「日本酒の技術で、日本酒を飲まない人にも届く製品を作れないか」という問いから始まっている。 そしてもうひとつ、クラッチュが市販品とかなり違うのは糖類を添加していないことだ。市販のレモンサワーの素が糖類で甘みを作っているのに対し、クラッチュの甘みは大吟醸の米の甘みとレモン果汁の天然の甘みだけで成り立っている。香料も入っていない。レモンの香りはすべて果汁40%の湯河原産レモンそのものから来ている。 原材料を並べるとその差は一目瞭然だ。市販品のラベルには「醸造アルコール、果糖ブドウ糖液糖、レモン果汁、酸味料、香料」と並ぶ。クラッチュのラベルには「レモン(神奈川県産)、清酒、醸造アルコール」。これだけだ。 焼酎ベースの方が「ザ・レモンサワー」という味には近い。居酒屋で飲む馴染みのあの味だ。クラッチュは少し違う場所にいる。レモンサワーであることは確かだが、大吟醸の米の甘みが果汁の酸味を下から支え、糖類のべたつきがないぶん後味がきれいに消える。もう少しやわらかく、もう少し品のある飲み物になる。それを「上品」と感じるか「物足りない」と感じるかは好みの問題だが、一つ確かなことは、他のレモンサワーの素では代替できない味だということだ。 酒蔵がレモンサワーの素を作るまでの話 金井酒造店が日本酒だけを作っていた時代は長い。清酒「笹の薫」や「白笹鼓」を醸し、地元の人に飲まれてきた。しかしこの十数年、日本酒の国内消費量は減り続けている。若い世代がビールやハイボールやレモンサワーに向かうなかで、酒蔵としてどう存在し続けるかという問いは避けて通れない。 クラッチュの開発は、その問いへの一つの回答だった。日本酒を作る技術はそのまま活かし、製品の出口を変える。大吟醸をベースにレモンの果汁を合わせるという発想は、酒蔵だからこそ思いつくことであり、酒蔵だからこそ実現できることだった。 なぜ果汁40%という高い配合にしたのか。もっと果汁率を下げればコストを抑えられるし、万人受けする甘い味にもしやすい。それでも40%にこだわったのは、「レモンを搾って自分で作るレモンサワー」に匹敵する飲み物を目指したからだ。居酒屋のカウンターでレモンを半分に切ってジューサーで搾り、焼酎とソーダで割る。あの鮮烈な一杯に負けないものを、ボトルで届けたかった。...
レモンサワーは焼酎以外でも作れる — 大吟醸・日本酒ベースという新しい選択肢
レモンサワーのベースは焼酎。それが当たり前だと思っている人は多い。実際、居酒屋で出てくるレモンサワーの99%は焼酎ベースだし、スーパーに並ぶレモンサワーの素もほぼすべてが焼酎を使っている。しかし「ベースのお酒を変えたらどうなるか」と考えたことはあるだろうか。ウォッカ、ジン、そして日本酒。ベース酒が変わると、レモンサワーはまったく別の飲み物になる。 なぜレモンサワーは焼酎ベースが主流なのかそもそもレモンサワーが焼酎ベースになった理由は、歴史的な経緯と実利の両面がある。昭和の居酒屋文化のなかで、安価な甲類焼酎にレモンとソーダを加えたのがレモンサワーの原型だ。甲類焼酎は連続式蒸留で造られるため味にクセがなく、レモンの風味を邪魔しない。しかも安い。店側にとっては原価を抑えられ、客側にとってはさっぱり飲める。この利害の一致が、焼酎ベース一択の状況を半世紀以上にわたって作り上げてきた。 焼酎ベースのレモンサワーの味わいは、シャープでドライだ。アルコールの輪郭がはっきりしていて、レモンの酸味と合わさるとキリッとした切れ味が生まれる。揚げ物や脂っこい料理との相性は抜群で、口の中をさっぱりリセットしてくれる。この「リセット力」こそが、焼酎ベースのレモンサワーが居酒屋の定番であり続ける最大の理由だ。 ただし弱点もある。焼酎ベースはアルコール感が前に出やすく、飲み慣れない人には「ツンとくる」印象を与えることがある。レモンと炭酸で和らげてはいるが、ベース酒そのものの風味で楽しませる設計にはなっていない。あくまで「割り材」としての焼酎であり、酒としての存在感は薄い。 焼酎ベースのレモンサワーは優秀な「食中酒」だが、ベース酒の味わいを楽しむ飲み物ではない。 ウォッカベース、ジンベース — 居酒屋で増える「焼酎以外」実は近年、焼酎以外のベース酒を使ったレモンサワーが居酒屋やバーで増えてきている。その筆頭がウォッカベースだ。 ウォッカは焼酎以上に無味無臭に近く、レモンの風味をさらにピュアに引き出す。モスクワミュールやスクリュードライバーのように、ウォッカは「割り材として最も優れた蒸留酒」という評価がカクテルの世界では定着している。レモンサワーに使っても、焼酎よりすっきりした仕上がりになる。アルコールの嫌な匂いが少ないため、お酒にあまり強くない人からの支持も厚い。 ジンベースのレモンサワーも面白い存在だ。ジンにはジュニパーベリーをはじめとするボタニカルの香りがあり、レモンの柑橘感と重なることで複雑なアロマを生む。ジントニックが好きな人なら、ジンベースのレモンサワーはきっとハマるだろう。都内のクラフトカクテルバーでは、すでにクラフトジンを使ったレモンサワーをメニューに載せている店が少なくない。 ただし、ウォッカもジンも蒸留酒だ。焼酎ベースと比べて味の方向性は異なるが、「蒸留酒特有のドライさ」は共通している。アルコール感が前に出やすいという焼酎の弱点は、ウォッカやジンでも完全には解消されない。 ウォッカやジンに変えても、蒸留酒ベースである以上、ドライな酒質からは逃れられない。 醸造酒ベースという発想の転換ここで視点を変えてみたい。焼酎、ウォッカ、ジン。これらはすべて蒸留酒だ。原料を発酵させた後に蒸留することでアルコール度数を高め、クセを取り除いている。蒸留の過程で原料由来の旨味やコクの多くが失われるため、どうしてもドライな方向に振れる。 一方、醸造酒は蒸留を経ずに発酵だけで仕上げるため、原料の味わいがそのまま残る。ワインならブドウの果実味、ビールなら麦芽の甘み、そして日本酒なら米の旨味と甘み。これらをレモンサワーのベースにしたらどうなるか。 実はビールベースのレモンサワー(レモンビール)はすでにヨーロッパで一般的だし、白ワインにレモンとソーダを加えるスプリッツァーも定番カクテルだ。醸造酒とレモンの組み合わせは決して突飛ではない。ただ、日本酒をレモンサワーのベースに使うという発想は、まだほとんど世の中に浸透していない。清酒ベースのレモンサワーの素を実際に使ってみた感覚を別記事にまとめているが、焼酎ベースとは味の構造がまるで違う。 日本酒は米と水と麹から造られる。特に大吟醸は精米歩合50%以下まで米を削り、低温で長期間かけて丁寧に醸す。結果として生まれるのは、華やかな吟醸香とふくよかな米の甘み、そしてきれいに切れる後味だ。この特性がレモンと出会うと、焼酎ベースとはまったく異なる世界が開ける。 蒸留酒のドライさを離れ、醸造酒の旨味でレモンを包む。日本酒ベースのレモンサワーは、その発想から生まれた。 大吟醸ベースのレモンサワーは、何が違うのか焼酎ベースのレモンサワーを飲んだとき、味の構成は「レモンの酸味+炭酸の爽快感+アルコールのキック」というシンプルな三層構造になっている。ベース酒自体の味はほぼ感じない。それが焼酎の良さでもあるが、味の深みという点では限界がある。 大吟醸ベースにすると、ここに「米の甘み」と「吟醸香」という二つの層が加わる。レモンの酸味に米の甘みが寄り添うことで、口の中でまろやかな円を描くような味わいになる。酸味がとがらず、やわらかく広がる感覚は、焼酎ベースとはまた違う。 後味も大きく異なる。焼酎ベースはスパッと切れるのが特徴だが、大吟醸ベースはレモンの余韻が米の甘みとともにゆるやかに消えていく。「きれいに切れる」のではなく「きれいに残る」という表現が近い。飲み終えた後の口の中に、ほのかにレモンと米の香りが漂う。これがたまらなく心地よい。 吟醸香とレモンの柑橘香の相性も特筆すべきだ。大吟醸の吟醸香にはリンゴやバナナを思わせるフルーティーな成分が含まれており、レモンの柑橘感と喧嘩せず、むしろフルーツカクテルのような華やかさを生み出す。焼酎の無味無臭がレモンの「引き立て役」だとすれば、大吟醸はレモンの「共演者」だ。 焼酎がレモンの引き立て役に徹するのに対し、大吟醸はレモンと共演する。この違いは飲めばすぐにわかる。 焼酎のアルコール感が苦手な人へレモンサワーは好きだけれど、焼酎独特のアルコール感がちょっと苦手。そういう人は意外と多い。特に女性やお酒をあまり飲まない人のなかには、「レモンサワーは好きだがもう少しやわらかい味だったらいいのに」と感じている層が確実にいる。 大吟醸ベースのレモンサワーは、まさにその悩みに応える存在だ。蒸留酒のツンとくるアルコール感がなく、米由来のまろやかさがアルコールを包み込むため、同じ度数でも口当たりがやわらかい。ソーダで割ればアルコール度数は6〜7%程度に落ち着くが、体感的にはさらに軽く感じるという声は多い。 「お酒が弱いわけではないが、強い酒は好まない」という人。「ビールは苦くて飲めないが、レモンサワーなら飲める」という人。「居酒屋の最初の一杯はいつもレモンサワー」という人。こうした方々が大吟醸ベースのレモンサワーを飲むと、多くの場合「これ、今まで飲んでたのと全然違う」という反応になる。 焼酎のアルコール感が壁になっていた人にとって、大吟醸ベースは新しい入口になる。 クラッチュ 湘南潮彩レモン40という回答「焼酎以外のレモンサワーの素が欲しい」「日本酒ベースのレモンサワーを家で試してみたい」。そう思って調べてみると、選択肢が極めて少ないことに気づくはずだ。ウォッカベースやジンベースのレモンサワーの素はほぼ市販されておらず、バーに行くしかない。日本酒ベースも、京都の佐々木酒造がKURANDで「ちょっと贅沢な大吟醸レモンサワーの素」を出しているのが目につく程度だ。 そのなかで、神奈川県秦野市の金井酒造店が造る「クラッチュ 湘南潮彩レモン40」は、大吟醸ベースのレモンサワーの素として際立った存在だ。明治元年創業の蔵元が、自家醸造の大吟醸をベースに、湯河原産の国産レモン果汁を40%配合して仕込んでいる。...
レモンサワーは焼酎以外でも作れる — 大吟醸・日本酒ベースという新しい選択肢
レモンサワーのベースは焼酎。それが当たり前だと思っている人は多い。実際、居酒屋で出てくるレモンサワーの99%は焼酎ベースだし、スーパーに並ぶレモンサワーの素もほぼすべてが焼酎を使っている。しかし「ベースのお酒を変えたらどうなるか」と考えたことはあるだろうか。ウォッカ、ジン、そして日本酒。ベース酒が変わると、レモンサワーはまったく別の飲み物になる。 なぜレモンサワーは焼酎ベースが主流なのかそもそもレモンサワーが焼酎ベースになった理由は、歴史的な経緯と実利の両面がある。昭和の居酒屋文化のなかで、安価な甲類焼酎にレモンとソーダを加えたのがレモンサワーの原型だ。甲類焼酎は連続式蒸留で造られるため味にクセがなく、レモンの風味を邪魔しない。しかも安い。店側にとっては原価を抑えられ、客側にとってはさっぱり飲める。この利害の一致が、焼酎ベース一択の状況を半世紀以上にわたって作り上げてきた。 焼酎ベースのレモンサワーの味わいは、シャープでドライだ。アルコールの輪郭がはっきりしていて、レモンの酸味と合わさるとキリッとした切れ味が生まれる。揚げ物や脂っこい料理との相性は抜群で、口の中をさっぱりリセットしてくれる。この「リセット力」こそが、焼酎ベースのレモンサワーが居酒屋の定番であり続ける最大の理由だ。 ただし弱点もある。焼酎ベースはアルコール感が前に出やすく、飲み慣れない人には「ツンとくる」印象を与えることがある。レモンと炭酸で和らげてはいるが、ベース酒そのものの風味で楽しませる設計にはなっていない。あくまで「割り材」としての焼酎であり、酒としての存在感は薄い。 焼酎ベースのレモンサワーは優秀な「食中酒」だが、ベース酒の味わいを楽しむ飲み物ではない。 ウォッカベース、ジンベース — 居酒屋で増える「焼酎以外」実は近年、焼酎以外のベース酒を使ったレモンサワーが居酒屋やバーで増えてきている。その筆頭がウォッカベースだ。 ウォッカは焼酎以上に無味無臭に近く、レモンの風味をさらにピュアに引き出す。モスクワミュールやスクリュードライバーのように、ウォッカは「割り材として最も優れた蒸留酒」という評価がカクテルの世界では定着している。レモンサワーに使っても、焼酎よりすっきりした仕上がりになる。アルコールの嫌な匂いが少ないため、お酒にあまり強くない人からの支持も厚い。 ジンベースのレモンサワーも面白い存在だ。ジンにはジュニパーベリーをはじめとするボタニカルの香りがあり、レモンの柑橘感と重なることで複雑なアロマを生む。ジントニックが好きな人なら、ジンベースのレモンサワーはきっとハマるだろう。都内のクラフトカクテルバーでは、すでにクラフトジンを使ったレモンサワーをメニューに載せている店が少なくない。 ただし、ウォッカもジンも蒸留酒だ。焼酎ベースと比べて味の方向性は異なるが、「蒸留酒特有のドライさ」は共通している。アルコール感が前に出やすいという焼酎の弱点は、ウォッカやジンでも完全には解消されない。 ウォッカやジンに変えても、蒸留酒ベースである以上、ドライな酒質からは逃れられない。 醸造酒ベースという発想の転換ここで視点を変えてみたい。焼酎、ウォッカ、ジン。これらはすべて蒸留酒だ。原料を発酵させた後に蒸留することでアルコール度数を高め、クセを取り除いている。蒸留の過程で原料由来の旨味やコクの多くが失われるため、どうしてもドライな方向に振れる。 一方、醸造酒は蒸留を経ずに発酵だけで仕上げるため、原料の味わいがそのまま残る。ワインならブドウの果実味、ビールなら麦芽の甘み、そして日本酒なら米の旨味と甘み。これらをレモンサワーのベースにしたらどうなるか。 実はビールベースのレモンサワー(レモンビール)はすでにヨーロッパで一般的だし、白ワインにレモンとソーダを加えるスプリッツァーも定番カクテルだ。醸造酒とレモンの組み合わせは決して突飛ではない。ただ、日本酒をレモンサワーのベースに使うという発想は、まだほとんど世の中に浸透していない。清酒ベースのレモンサワーの素を実際に使ってみた感覚を別記事にまとめているが、焼酎ベースとは味の構造がまるで違う。 日本酒は米と水と麹から造られる。特に大吟醸は精米歩合50%以下まで米を削り、低温で長期間かけて丁寧に醸す。結果として生まれるのは、華やかな吟醸香とふくよかな米の甘み、そしてきれいに切れる後味だ。この特性がレモンと出会うと、焼酎ベースとはまったく異なる世界が開ける。 蒸留酒のドライさを離れ、醸造酒の旨味でレモンを包む。日本酒ベースのレモンサワーは、その発想から生まれた。 大吟醸ベースのレモンサワーは、何が違うのか焼酎ベースのレモンサワーを飲んだとき、味の構成は「レモンの酸味+炭酸の爽快感+アルコールのキック」というシンプルな三層構造になっている。ベース酒自体の味はほぼ感じない。それが焼酎の良さでもあるが、味の深みという点では限界がある。 大吟醸ベースにすると、ここに「米の甘み」と「吟醸香」という二つの層が加わる。レモンの酸味に米の甘みが寄り添うことで、口の中でまろやかな円を描くような味わいになる。酸味がとがらず、やわらかく広がる感覚は、焼酎ベースとはまた違う。 後味も大きく異なる。焼酎ベースはスパッと切れるのが特徴だが、大吟醸ベースはレモンの余韻が米の甘みとともにゆるやかに消えていく。「きれいに切れる」のではなく「きれいに残る」という表現が近い。飲み終えた後の口の中に、ほのかにレモンと米の香りが漂う。これがたまらなく心地よい。 吟醸香とレモンの柑橘香の相性も特筆すべきだ。大吟醸の吟醸香にはリンゴやバナナを思わせるフルーティーな成分が含まれており、レモンの柑橘感と喧嘩せず、むしろフルーツカクテルのような華やかさを生み出す。焼酎の無味無臭がレモンの「引き立て役」だとすれば、大吟醸はレモンの「共演者」だ。 焼酎がレモンの引き立て役に徹するのに対し、大吟醸はレモンと共演する。この違いは飲めばすぐにわかる。 焼酎のアルコール感が苦手な人へレモンサワーは好きだけれど、焼酎独特のアルコール感がちょっと苦手。そういう人は意外と多い。特に女性やお酒をあまり飲まない人のなかには、「レモンサワーは好きだがもう少しやわらかい味だったらいいのに」と感じている層が確実にいる。 大吟醸ベースのレモンサワーは、まさにその悩みに応える存在だ。蒸留酒のツンとくるアルコール感がなく、米由来のまろやかさがアルコールを包み込むため、同じ度数でも口当たりがやわらかい。ソーダで割ればアルコール度数は6〜7%程度に落ち着くが、体感的にはさらに軽く感じるという声は多い。 「お酒が弱いわけではないが、強い酒は好まない」という人。「ビールは苦くて飲めないが、レモンサワーなら飲める」という人。「居酒屋の最初の一杯はいつもレモンサワー」という人。こうした方々が大吟醸ベースのレモンサワーを飲むと、多くの場合「これ、今まで飲んでたのと全然違う」という反応になる。 焼酎のアルコール感が壁になっていた人にとって、大吟醸ベースは新しい入口になる。 クラッチュ 湘南潮彩レモン40という回答「焼酎以外のレモンサワーの素が欲しい」「日本酒ベースのレモンサワーを家で試してみたい」。そう思って調べてみると、選択肢が極めて少ないことに気づくはずだ。ウォッカベースやジンベースのレモンサワーの素はほぼ市販されておらず、バーに行くしかない。日本酒ベースも、京都の佐々木酒造がKURANDで「ちょっと贅沢な大吟醸レモンサワーの素」を出しているのが目につく程度だ。 そのなかで、神奈川県秦野市の金井酒造店が造る「クラッチュ 湘南潮彩レモン40」は、大吟醸ベースのレモンサワーの素として際立った存在だ。明治元年創業の蔵元が、自家醸造の大吟醸をベースに、湯河原産の国産レモン果汁を40%配合して仕込んでいる。...